研究課題
我々の高度な神経機能を支える中枢神経系の中でも、大脳皮質は哺乳類の進化の過程で拡大した領域である。脳室帯を構成する神経前駆細胞は放射状グリア(RG)細胞と呼ばれ、その名のとおり放射状に脳室面(apical面)から脳表面(basal面)まで突起を伸ばし、きわめて極性の高い形態を呈することが知られている。細胞内の物質輸送は、mRNAレベルで行われる場合があり、輸送される間に分解されることがないように、「RNA顆粒」と呼ばれる複合体に取り囲まれた状態で細胞内の目的の部位に輸送され、局所に存在するリボソーム上で翻訳されることが多い。RNA結合タンパク質であるFMRP(脆弱性X症候群タンパク質)がRG細胞のapical側およびbasal側において局在することから、RG細胞においても細胞内物質輸送がmRNAレベルで行われていると予想した。そこでRNA結合タンパク質であるFMRPに結合するRNAを探索するために、RIP-ChIP法を用いて、FMRPが結合するmRNAを網羅的に探索したところ、865個の標的mRNAを同定することができた。Fmr1ノックアウトマウスの大脳皮質において、免疫染色法によりこれらのタンパク質の発現を調べたところ、数個のタンパク質の発現が低下していた。得られた網羅的解析データを過去の文献と比較することにより、胎生期のRG細胞に特異的なFMRP標的mRNAを絞り込むことができた。さらに、Fmr1ノックアウトマウスを用いた発現解析により、FMRPによって制御される分子について検討できた。現在、同定した候補mRNAの大脳皮質における発現について、in situハイブリダイゼーション法により確認中である。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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