研究課題/領域番号 |
26291047
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
鈴木 崇之 東京工業大学, 生命理工学研究科, 准教授 (60612760)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 発生生物学 / 神経回路形成 / 軸索誘導 / 視覚神経系 / ショウジョウバエ |
研究実績の概要 |
ショウジョウバエの視神経系を用いて、神経回路形成の分子メカニズムを解明する。我々は今まで新規膜受容体タンパク質であるGogoを同定し、その機能解析を行ってきた。Gogoはカドヘリンの一種であるFlamingoと協調して視神経の脳内の層特異的な投射を制御していることを明らかにした。それに関連して、LAR、Ptp69D、unc5、Netrinなどが密接に相互作用をしながら層特異的な投射をコントロールしていると考え、その全貌を明らかにしたいと考えている。それに加え、Gogoは脳内のカラム(柱)状構造を認識し、規則正しく投射させる機能も担っていると考え、その分子メカニズムを解き明かすことを目的に研究を進めた。 まず、Gogoリガンドを同定することを目的としてカイコ細胞にGogoの細胞外ドメインを大量に発現させるバキュロウィルスの系を立ち上げたが、発現精製がうまくいかず、カリフォルニア工科大学に依頼して、大量発現と精製を行ってもらった。その結果、試行錯誤の結果、なんとかGogoの結合相手の発現パターンを胚の中枢神経で明らかにすることが出来た。また、生きた脳をそのまま切り、その断面を染色する方法も開発した。その副産物として、LARやPtp69Dの細胞外ドメインを用いて、そのリガンドの発現パターンを発生途中の脳で可視化することが出来るようになった。これを使って、候補となる変異体にバインドさせる染色に取り掛かることが出来る。 また、GogoタンパクのC末にGFPを融合させ、GFPの局在を追うことによって、Gogoの局在が詳細に分かるようになった。その結果、Gogoの発現はサナギ中期までは認められるが、それ以降は発現が消滅していると考えられる。 少数のGogoのクローンを作成すると、サナギの中期までは相当数細胞が見られるのに、大人になるまでにメダラ内に残っているgogo変異体R8が激減する。カラム内に侵入するのに競争原理が働くことが示唆され、それにGogoが関与していることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(理由) Gogoの発現・局在を細胞特異的に詳細に解析することが出来るようになり、GogoはM1層での固着・認識に関係しており、M3層への投射には関係ないことが分かり、新たな知見を得ることが出来た。やはり、Gogoはカラムのポケットのような入り口を認識することがその重要な役割だと認識を新たにした。最終年度はGogoの機能的な解析に力を入れて、彷徨うGogo変異体の軸索の行方をしっかりと追跡し、カラム認識機構の普遍的な原理を見出すことを目標とする。その目標に向かって、概ね順調に研究が進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
Gogoの変異体の継時的で網羅的な解析を再びやり直し、カラム形成の継時的なイベントの詳細な解析を通して、興味深い点を洗い出す。特異な分子遺伝学的アプローチをとりいれつつ、Gogoの細胞外ドメインの染色によるGogoリガンドの探索を本格的に行う。まずは、候補遺伝子を幾つか試して、スクリーニング法の確立とリガンドの同定を目指す。Gogoとunc5の協調性にも着目し、unc5変異体の作成や発現の解析も行う。これらの科学的・技術的な総力を結集して、研究全体が結実するように強力に推し進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品を最終年度に予定以上に使用する必要が出てきたため。
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次年度使用額の使用計画 |
ショウジョウバエの飼育費など、消耗品費により多く使用していく。
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