ショウジョウバエの視神経系を用いて、神経回路形成の分子メカニズムを解明する目的のため、我々は新規膜受容体タンパク質であるGogoを同定し、その機能解析を行ってきた。Gogoはカドヘリンの一種であるFlamingoと協調して視神経の脳内の層特異的な投射を制御していることを明らかにした。それに加え、Gogoは脳内のカラム(柱)状構造を認識し、規則正しく投射させる機能も担っていると考え、その分子メカニズムを解き明かすことを目的に研究を進めた。 今までの研究の流れとは少し視点を変え、原点に立ち戻り、R8視神経特異的なGogo変異体を作成した。この変異体では、R8軸索がサナギ初期の段階で、M1層に整列してとどまることが出来ず、一時的に深く潜り込んでしまう。さらに、軸索同士の距離を保つことが出来ずにお互いにくっついてしまうR8が頻出した。 しかし、ここまでは今までのGogoの変異体の解析からある程度予想されていたことではある。Gogoのこの二つの機能を解くカギは、Fmiの過剰発現体と変異体の解析に潜んでいた。Fmiの機能解析をサナギ初期において初めて行ったところ、Fmiはフィロポーディアの形成と伸長を促進する機能を持っていることがわかり、Gogoはこれを抑制する機能を持っていることが分かった。このGogoの機能が、サナギ初期でR8どうしがくっつかないように距離を一定に保つことにつながっていると考えられる。サナギの後半でGogoの発現が無くなると、Fmiのフィロポーディア伸長という機能にスイッチが入り、R8がM3に到達することになる。これらのことは、層特異的な軸索投射も、軸索どうしの一定間隔の維持にも、フィロポーディアの活動を抑制するというGogoの機能が深く関係していることを示唆しており、GogoとFmiの真の機能が層・カラム特異的に重要な役割を果たしていることを明らかにしたと考えている。
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