研究課題/領域番号 |
26291049
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
渡邉 正勝 大阪大学, 生命機能研究科, 准教授 (90323807)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ギャップジャンクション / ゼブラフィッシュ / 細胞間相互作用 / 電気生理解析 |
研究実績の概要 |
ゼブラフィッシュの体表模様を構成する色素細胞を研究対象として、細胞集団サイズ及び細胞集団間の距離を規定するギャップジャンクションの機能解明を目指した研究を進めている。また、今年度は、脊椎骨のプロポーション(パターン)を決めるギャップジャンクションの機能解析に関しても解析を行った。 昨年度までに、パターン形成におけるコネキシン41.8及びコネキシン39.4の作用に関して、コネキシン41.8変異体(Cx41.8M7)を用いた電気生理解析と遺伝子組換え体の作製から、両者が協調的に機能していることを証明した。本成果をまとめた論文はJournal of Biological Chemistryに受理され2016年1月に掲載された。この過程で、コネキシン41.8の異なる変異体(MKLCx41.8)に関しても電気生理解析を行ったところ、チャネルのゲーティングに変化が生じていることが分かった。ストライプ模様を迷宮模様に変換するCx41.8M7は電流を全く流さないのに対し、電流のリークが見られる変異体ではストライプが割れるという現象(黄色素細胞からの距離を規定しているものと考えられる)が引き起こされることが分かった。 脊椎骨のプロポーションを決めるコネキシン43に関しての電気生理解析では、ギャップジャンクションに異常(コンダクタンスの低下)が生じるとゼブラフィッシュの尾鰭の短縮(伸長阻害)が起こり、一方、ヘミチャネルの以上(コンダクタンスの増大)が生じると脊椎骨の短縮(伸長阻害)が起こることが明らかになった。 また、他のコネキシンのゼブラフィッシュ形態形成に関与するかどうかに関して明らかにする目的で、CRISPRを用いた遺伝子破壊系統の作製を進めている。これまでにCx41.8、Cx39.4のほかに、Cx45.6, Cx48.5などアルファタイプコネキシンを中心に作製を行ってきたが、明らかな表現型は得られていない。一部、詳細な解析のために外部の研究者に系統分与を行い、解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
H26年度計画がH27年度にずれ込んだこと、脊椎骨のプロポーションを決めるギャップジャンクション蛋白であるコネキシン43の解析に時間を割いた事から、Cx41.8変異体に関するin vitro解析の一部に進展の遅れが生じた。しかし、脊椎骨と尾鰭のプロポーション決定に関するコネキシン43機能の研究に関しては大きな進展があった。コネキシン43の解析に関しては、過去の研究からギャップジャンクションのコンダクタンス低下が尾鰭の伸長阻害を引き起こすことは分かっていたが、なぜ脊椎骨の伸長阻害を引き起こすのかは不明であった。今回の電気生理解析により、ギャップジャンクションが担う複数の機能がそれぞれ重要な役割を担っていることが明らかになった。さらに、チャネルの多様機能が生物の多様化に関与している可能性が示唆された。本結果に関しては現在論文投稿中である。 コネキシン41.8機能解明に向けた色素細胞のin vitro解析に関しては、アガロース加工ディッシュを用いて行う培養・細胞間相互作用解析の予備実験を行い、48時間程度のタイムラプス観察が行う条件が整った。これを用いて、細胞間相互作用の解析とともに、ギャップジャンクションが仲介する低分子合物の同定を目指していく予定である。遺伝子破壊系統の作製に関しては、コネキシンを中心に進めているが、この他にも膜蛋白質を中心に破壊系統の作成を進めている。このうち、F0世代で変化が現れたものに関してはF1世代、F2世代の作製に移っている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きコネキシンに関する遺伝子破壊系統の作製を行い、体表模様以外の形質を含めた形態形成に関与するコネキシンの検索を進めていく。体表模様形成に関与することが明らかなコネキシン41.8とコネキシン39.4に関しては、タグを付加した蛋白質を発現させた系統を用いてin vitro解析を行い、細胞接触点での局在の有無を確認する。これまでの予備実験により、黄色素細胞と黒色素細胞を200umの距離に配置した場合にも細胞仮足による接触が確認できている。細胞仮足を介した細胞接触点での局在が確認できれば、色素細胞間相互作用における長距離活性化作用分子の実体がギャップジャンクションであることの証明に近づく。ギャップジャンクションを通過する分子に関しては、上記、条件検討を行ったin vitro培養系を用いて、共同研究者との研究により解明していく。最近、他の研究グループによって、コネキシン41.8が色素前駆細胞における細胞仮足の伸長・方向性に関与しているという報告があったことから、本研究では分化した色素細胞における機能解明を目指した観察を勧めていく。コネキシン43に関しては、昨年度に検出したアミノ酸変異がin vitroで蛋白質のリン酸化に関与している可能性が示唆される結果が得られている。この件に関して、このコネキシン蛋白質のリン酸化が、ゼブラフィッシュ生体内で、骨形成に関してどのような意味を持っているのかについての検討を行う。そして、これらの結果について、論文としてまとめ、発表していく。
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