研究課題
マウス初期胚のノードには左向きの水流が発生し、この水流がノードcrown細胞における複数の左右軸関連遺伝子の発現を左右非対称にする。これらの左右非対称発現は、ノードにおける分泌因子Nodalの活性を左側優位にし、その結果、左側側板中胚葉にNodal発現が拡張し左右軸が確立されることになる。ノードにおける非対称遺伝子発現の制御メカニズムの多くは不明であり、胚の一過的構造における短時間の現象であるため、定法によるシスエレメントの解析及びこれに結合するタンパク質の同定は難易度が高く時間もかかる。そこで、今年度は、公共データーベースに登録されてたすべてのChIPシークエンスの生データ(SRA)をスーパーコンピューターで処理し、ゲノムブラウザ上で任意のゲノム上におけるすべてのChIPシークエンスデータを一覧できるデーターベースChIP-Atlasを構築した。データーベースのURLは、http://chip-atlas.orgであり過日公開した。ChIPシークエンス技術の発展及びデータの集積は著しく、本データベースは公共データーベースに追加されたSRAを半永久的に自動処理し、ChIP-Atlasに追加する仕組みを組み込んだ。これによって、ゲノムDNA/転写因子関連の研究では既存のChIPシークエンス情報を最大限に活用できるようになった。私たちが着目する左右軸関連遺伝子の遺伝子座にも多くのタンパク質が結合していることが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
実験による初期左右軸形成機構の解析には時間がかかっているが、公共データーベースに登録されたすべてのChIPシークエンスデータ(SRA)を一覧可能なChIP-Atlasを構築することができたため、全体としては概ね順調に進展していると評価した。
実験による初期左右軸形成機構の解析を推進していく。
平成27年度はデーターベース構築が大きく発展することになったため、基金分の経費の使用を抑制することができた。
平成28年度は全体計画のバランスを取りながら実験による解析に主体を移す予定であり、繰り越した研究費を活用していく。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
Proc Natl Acad Sci USA
巻: 112 ページ: E5300-7
10.1073/pnas.1504529112.
J Cell Biochem
巻: 117 ページ: 780-792
10.1002/jcb.25368.
FASEB J
巻: 30 ページ: 933-947
10.1096/fj.15-279653.
http://chip-atlas.org