研究課題
受精を成立させる精子と卵子の膜融合は、正に生命の誕生という極めて重要な現象であるにも関わらず、その仕組みは解明されていない。我々は世界に先駆けて精子と卵子の膜融合に必要とされる因子IZUMO1を同定し (Inoue N et al, Nature 2005) 、その融合活性に不可欠なコア領域を見出した (Inoue N et al, Development 2013)。この領域はα-ヘリックス含量が高く、2量体化を引き起こす。さらに我々はIZUMO1を発現することで培養細胞を卵子細胞膜に接着させることに成功し、これには融合コア領域が必須なことを見出した。本年度は、IZUMO1による配偶子膜融合の制御メカニズムを解明するために、①IZUMO1発現細胞-卵子の接着面で起こるIZUMO1の構造変化、特に多量体化に着目し、 Bimolecular Fluorescence Complementation (BiFC) 法によりその解析を行った。 ②またPhoton Counting Histogram (PCH) 法により、精子上でのIZUMO1の重合数を測定し、IZUMO1レセプターJUNOによるIZUMO1の重合数による分子認識の特異性を検討した。③さらに、IZUMO1発現細胞-卵子の接着面でのJUNOの局在変化を検討した。これらの解析から推測された分子モデルは、精子上で、はじめ単量体であるIZUMO1が、JUNOに認識され、配偶子間接着が開始する。その後、接着面で速やかにIZUMO1 は2量体化し、融合の引き金を引くための強固な接着が生じる。この反応には未同定の卵子側IZUMO1レセプターが関与していることが考えられる。
2: おおむね順調に進展している
現在までに、この研究計画をもとにした査読付き国際学術論文の掲載はされていないが、このような学術雑誌に投稿できる段階までデータが蓄積してきている。次年度以降は、積極的に研究成果を国際サイエンスコミュニティーや国民に向けて発信するとともに、研究計画に沿って新たな発見ができるよう、尽力したい。
研究計画は、概ね順調に進展しているため、特段の計画変更はない。次年度以降は、新規IZUMO1レセプターの同定や接着面で起こるIZUMO1の詳細な構造変化の解析、さらに他の融合因子との関連性を含めいて包括的に研究を推進したい。
次年度以降に消耗品等の物品を高額購入予定があるため。
次年度以降、研究計画に沿って適正に予算を執行し、学術研究助成基金助成金分により高額物品を適宜購入予定である。
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 図書 (2件) 備考 (1件)
Proc Natl Acad Sci U S A
巻: 112 ページ: 311-320
10.1073/pnas.1416723112
細胞工学
巻: 33 ページ: 386-392
http://www.fmu.ac.jp/home/cellsci/kenkyu.html