研究課題
受精を成立させる精子と卵子の膜融合は、正に生命の誕生という極めて重要な現象であるにも関わらず、その仕組みは解明されていない。我々は世界に先駆けて精子と卵子の膜融合に必要とされる因子IZUMO1を同定し (Inoue N et al, Nature, 2005)、その融合活性に不可欠なコア領域を見出した (Inoue N et al, Development, 2013)。この領域はαヘリックス含量が高く、2量体化を引き起こす。さらに我々は培養細胞にIZUMO1を発現されることで、精子の代わりに卵子との接着を再構成できることを見出し、これには融合コア領域が必須なことを明らかにした。本年度は、受精の融合因子IZUMO1を中心とした新たな哺乳類の配偶子間膜融合の分子メカニズムを明らかにした (Inoue N et al, Nat Commun, 2015)。精子上のほとんどのIZUMO1は単量体で存在し、卵子側のカウンターレセプターであるJUNOを認識する。この時、卵子上のJUNOは精子周辺に集合し、それがトリガーとなりIZUMO1は、2量体化を伴うダイナミックな構造変化を引き起こす。その後、JUNOとの親和性は急速に失われ、JUNOに代わり、第二の未同定卵子レセプターと強固に結合し、細胞膜同士の距離を物理的に近づけて脂質二重膜の斥力を崩壊させる働きがあると考えられる。しかし、細胞-卵子のアッセイ系では卵子との強力な接着は生じるものの膜融合は生じない。このことから、これにはSPACA6、CD9などの他の因子の関与が必要であると考えられる。
1: 当初の計画以上に進展している
本研究課題によって推進された研究成果が、2015年に査読付き国際学術論文に掲載された (Inoue N et al, Nat Commun, 2015)。次年度以降も積極的に研究成果を国際サイエンスコミュニティーや国民に向けて発信するとともに、研究計画に沿って新たな発見ができるよう、尽力したい。
研究計画は順調に進展しているため、特段の計画変更はない。次年度以降は、第二のIZUMO1レセプターの同定や精密立体構造解析、さらに他の融合因子との関連性を含めて包括的に研究を推進したい。
次年度以降に消耗品等の物品を高額購入予定があるため。
次年度以降、研究計画に沿って適正に予算を執行し、学術研究助成基金助成金より高額物品を適宜購入予定である。
すべて 2016 2015 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 4件) 備考 (1件)
Nature Communications
巻: 6 ページ: 8858
10.1038/ncomms9858
The Journal of Biochemistry
巻: 158 ページ: 205-215
10.1093/jb/mvv038
http://www.fmu.ac.jp/home/cellsci/kenkyu.html