研究課題
受精を成立させる精子と卵子の膜融合は、正に生命の誕生という極めて重要な現象であるにも関わらず、その仕組みは十分には解明されていない。我々は世界に先駆けて精子と卵子の膜融合に必要とされる精子側の因子IZUMO1を同定し (Inoue N et al., Nature 2005)、IZUMO1のコア領域を起点とした、2量体化がIZUMO1の活性化の制御に重要なことを見出した (Inoue N et al., Nat Commun 2015)。しかしIZUMO1発現細胞は、卵子細胞膜に接着能を有し、その接着面で2量体化するものの、双方の膜の融合は成立しない (Inoue N et al., Development 2013)。本年度は、IZUMO1とその卵子側のパートナーレセプターであるJUNOの結合様式を原子レベルで解明した (Ohto U et al., Nature 2016)。この結果から、IZUMO1-JUNOの認識機構の詳細が明らかになったが、IZUMO1には卵子上のセカンドレセプターの存在が示唆されることから、IZUMO1-JUNOは、ごく初期に起こる配偶子間の「認識」に機能していると考えられ、実際の膜融合には、その後に起こる更なる制御系が存在すると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
本研究課題によって推進された研究成果が、2016年に査読付き国際学術論文に掲載された (Ohto U et al., Nature 2016)。この成果は新聞社に取り上げて頂き、先駆的な発見として紙面に掲載された。次年度以降も積極的に研究成果を国際サイエンスコミュニティーや国民に向けて発信するとともに、研究計画に沿って新たな発見ができるように尽力したい。
研究計画は順調に進展しているため、特段の計画変更はない。次年度以降は、第二のIZUMO1レセプターの同定やその精密立体構造解析、遺伝子改変マウスをベースとした生理的解析、さらに他の融合因子との関連性を含めて包括的に研究を推進したい。
次年度に消耗品等の物品を高額購入予定であるため。
次年度は、研究計画に沿って適正に予算を執行する。
すべて 2017 2016 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
Journal of Plant Research
巻: 130 ページ: 475-478
10.1007/s10265-016-0895-z
Scientific Reports
巻: 7 ページ: 39825
10.1038/srep39825
Nature
巻: 534 ページ: 566-569
10.1038/nature18596
http://www.fmu.ac.jp/home/cellsci/saibou-top.htm