研究課題/領域番号 |
26291053
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立母子保健総合医療センター(研究所) |
研究代表者 |
松尾 勲 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立母子保健総合医療センター(研究所), 病因病態部門, 部長 (10264285)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 発生・分化 / マウス胚 / 前後軸形成 / 細胞外マトリックス / 基底膜 / ライヘルト膜 |
研究実績の概要 |
哺乳動物初期胚においては、周辺の細胞表面や基底膜などに存在する細胞外マトリックス分子と分泌性シグナル因子が細胞外微小環境を構成する。特に前後軸形成過程では、短時間で細胞の配列や胚内での位置がダイナミックに変化しているが、細胞外マトリックスの分子的実体や細胞外マトリックス分子が担う細胞非自律的な機能は不明な点が多い。本研究では、マウス前後軸形成過程で、細胞外マトリックス分子などによって構成される微小環境が、細胞動態にどのような影響を与えるのか解明することを目的に研究をすすめている。 平成28年度については、着床前後の胚(4.5~5.5日目胚)を対象に下記の内容を明らかにした。 Lama1遺伝子欠損マウス胚(ラミニンα1欠損胚)は、胚性致死を示すが、細胞動態の詳細は明らかにされていない。そこで、着床前後の胚を用いて、光学顕微鏡レベル及び電子顕微鏡レベルでの組織学的解析、in situ ハイブリダイゼーションや免疫染色による分子マーカーを用いた発現解析を行った。その結果、Lama1欠損胚では、着床後ライヘルト膜がほとんど形成されないこと、受精後5.5日目まで(着床後1日目)はほぼ正常に発生するが、6.5日目では胚全体の形状が大きく変形し、多くの形態的異常を示すことが分かった。 Lama1欠損胚においてライヘルト膜を構成する他の細胞外マトリックス分子の発現を解析したところ、原始内胚葉や壁側内胚葉において、コラーゲンIVを始めとする他の細胞外マトリックス分子の沈着がほとんど観察されなかった。これらの結果は、マウス着床期におけるライヘルト膜(基底膜)の沈着にlama1遺伝子が必須であることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
4年間の研究計画の3年間を終えた時点ではあるが、概ね研究計画に沿って研究は進んでいる。細胞外マトリックス分子がどのような細胞動態を制御しているのかについては、まだ明確な解答が得られる段階までには至っていない。しかし、本研究計画の最大の焦点である細胞外マトリックス分子の分布とマウス胚形態との関係性については上述したような大きな進展があった。今後も当初の目的に沿って着実に進めていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
現在までに、マウス初期体軸形成過程における細胞外マトリックス分子の局在分布については、ほぼ明らかにすることに成功した。更に、Lama1欠損マウス胚の表現型解析を行うことで、ライヘルト膜(基底膜)の機能について明らかにしつつある。来年度以降も継続してLama1欠損マウス胚の表現型を詳細に解析することで、細胞外マトリックス分子による細胞動態制御機構を明らかにしたい。特に、着床胚期において、ラミニンが壁側内胚葉で発現すること、ノックアウト胚では初期胚性致死を示すことから、マウス体軸形成期におけるラミニン分子の機能を詳細に解析することを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度に遂行予定であった一部の実験を27年度へと変更した結果、人件費や研究に必要な物品費などが平成26年度から27年度にずれこんだことによる。平成27年度と28年度については概ね計画通りに使用している。
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次年度使用額の使用計画 |
当初の予定通り物品費・旅費・動物導入費などとして計画的に使用する。
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