研究課題
・ APC/Cユビキチンリガーゼの活性を負に制御するGIG1を欠く変異体では、気孔系譜細胞の非対称分裂に異常が生じ、ペイブメントセルと孔辺細胞の両方の性質を合わせ持つmixed fate cellが生じることがわかっている。この細胞運命決定に関する表現型を促進、あるいは抑圧する変異体のスクリーニングを行った。その結果、4個の変異体を独立に単離することができた。それぞれの原因遺伝子を同定するために、バッククロスにより生じたF2個体を用いて次世代シーケンスによる解析を行った。現在までに1つの変異体については、GIG1のパラログであるUVI4に変異があることが明らかになった。今後、これ以外の変異株について原因遺伝子の同定を進めていく。また、gig1変異体にcDNAライブラリーを導入して、細胞運命の異常に影響するcDNAの単離を行った。その結果、完全長cDNAライブラリーから2種類のcDNAを単離することができた。・ APC/C阻害タンパク質GIG1を誘導発現する系とプロテオームの手法を用いて、APC/Cの基質タンパク質を網羅的に同定することを試みた。その結果、GIG1の誘導により蓄積量が増大するタンパク質を多数同定できたが、もっとも影響を受けることが予想されるサイクリンBなどの細胞周期因子が検出されておらず、今後の条件検討が必要であると考えられる。・ 抑制型MYB3Rを欠く変異体では、受精卵の非対称分裂を正常に行うことができず、等分裂に近い形の分裂をするこがわかっている。この分裂の異常を経時的に詳しく解析するため、胚培養とライブイメージングの系を導入し、これらの実験の技術的な面をクリアした。また、ライブイメージング観察のために、受精卵の核、細胞膜が蛍光タンパク質で標識されるマーカーを抑制型MYB3Rの変異体に導入した。
2: おおむね順調に進展している
APC/Cが関与する細胞運命決定のメカニズムについて、gig1変異体を使った解析から複数の関連因子の候補を単離することができた。これらは今後、機能解析を行い細胞運命決定に関連した働きを持つかどうか調べていく。一方、GIG1の誘導発現系を用いたAPC/C基質の網羅的な解析では、蓄積することが予想されるタンパク質が検出されておらず、今回の実験系が予想通り動いているかどうか検証する必要があることがわかった。活性化型MYB3Rのプロモーター解析には、着手できなかったため、次年度以降に行う必要がある。抑制型MYB3Rの変異体で見られる受精卵の分裂異常については、ライブセルイメージングの系を確立できたが担当の研究員が退職するなど、再度、実験系の導入を行う必要があると考えられる。
これまでの研究の進捗状況を踏まえ以下のように計画している。①R1R2R3-Mybによる転写制御の分子機構 (1) 抑制型および活性化型MYB3R の遺伝子発現を詳細に検討する。 (2)抑制型および活性化型MYB3Rが形成するタンパク質複合体をプロテオームの手法により解析し、候補タンパク質を同定する。(3)活性化型MYB3Rと抑制型MYB3Rが細胞周期中を通じて、標的DNAとの結合をどのように変化させているのかをクロマチン免疫沈降法(ChIP)を用いて明らかにする。(4)活性化型MYB3RであるMYB3R4がG2/M期特定的に発現する仕組みを明らかにするため、プロモーター解析を行う。②孔辺細胞の発生における非対称分裂とG2/M期制御 (1)プロテオーム解析には新たにタバコ培養細胞を材料に使って改良を試みる。同定したAPC/C基質の候補の機能解析を行う。(2) gig1変異体を親株としたスクリーニングにより得られた変異株を用い、原因遺伝子の同定に向けた研究を進める。また、cDNAライブラリーの過剰発現により得られた候補遺伝子について、遺伝子破壊株や誘導発現株などを利用して機能解析を行う。③APC/Cによるタンパク質分解制御と細胞運命決定 (1) GIG1とUVI4の細胞運命決定に対して機能が異なる原因を明らかにするため、代表的なPAC/C基質であるM期サイクリン(6種類)に対する効果の違い解析する。(2) 種々の細胞周期因子の変異体を用い、gig1およびuvi4変異と異なった相互作用を示す因子を探索する。④受精卵の非対称分裂とG2/M期制御 抑制型MYB3R変異体では受精卵の非対称分裂に異常を示すことが分かっている。この非対称分裂におけるMYB3Rの働きを明らかにするため、ライブイメージング観察を行い変異体での第1分裂の様子を経時的に観察する。また受精卵の核相を決定するための実験を行う。
細胞運命決定に関連するAPC/Cの基質を探索することを目的として、GIG1の誘導系とプロテオームの手法を利用し、APC/C標的因子を網羅的に同定する計画であった。プロテオーム解析からは3000個程度のタンパク質が同定されるが、APC/Cの基質としてよく知られているタンパク質が検出されてこないことから実験系自体が期待通りに動いているかどうか確証をつかむことができなかった。本格的な標的因子の特定に進むためには、もう少しこの実験系を改良する必要があると判断した。このため、予定した研究の一部を翌年以降に行うこととした。
GIG1の誘導系を用いた実験系の改良を行い、プロテオームの手法を用いたAPC/C標的タンパク質の網羅的な同定を行う。同定された候補タンパク質について、標的であることを示す確証実験やその後の機能解析を次年度以降に行っていく。
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Plant Signal. Behav.
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