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2015 年度 実績報告書

細胞周期G2/M期制御のメカニズムと植物発生における多様な機能

研究課題

研究課題/領域番号 26291058
研究機関名古屋大学

研究代表者

伊藤 正樹  名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (10242851)

研究分担者 町田 泰則  名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80175596)
研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワード細胞分裂 / 細胞周期 / 非対称分裂 / 核内倍加
研究実績の概要

・ APC/Cユビキチンリガーゼの活性を負に制御するGIG1を欠く変異体では、非対称分裂に異常が生じ、細胞運命決定に特徴的な影響を受ける。この細胞運命決定に関する表現型を促進、あるいは抑圧する変異体の解析を行い、今年度、新たに2個の変異体の原因遺伝子を同定することができた。いずれも、核内RNA代謝に関わる因子であることから、孔辺細胞の運命決定プロセスに、核内RNA代謝が何らかの重要な役割を持つことが示唆された。
・ gig1変異体にcDNAライブラリーを導入して、細胞運命決定の異常に影響するcDNAの単離を行った。得られたcDNA はmRNAのポリA付加に機能する核タンパク質をコードしており、この遺伝子をノックアウトすると、gig1の表現型が促進されることが分かった。gig1変異により引き起こされる異常にはRNA代謝が密接に関連していることが改めて示唆された。
・ 昨年度から引き続き、APC/C阻害タンパク質GIG1を誘導発現する系とプロテオームの手法を用いて、APC/C基質タンパク質の網羅的な同定を試みた。しかし、APC/Cの基質として既に知られているサイクリンBが候補タンパク質の中に検出されておらず、今後の更なる条件検討が必要であることがわかった。
・ 細胞周期制御G2/M期に重要な転写因子MYB3Rがジベレリン信号伝達系と密接な関わりを持つ可能性を見出すことができた。抑制型MYB3Rを欠く変異体では、ジベレリン生合成の阻害による成長抑制が大きく緩和されることがわかった。また、発芽阻害、花成の抑制など成長とは直接関連しないジベレリン作用についても、阻害剤の効果を回復させることがわかった。この結果から、MYB3Rはストレス下での成長抑制だけではなく、ジベレリン信号伝達全般に深く関連していることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

gig1変異体を用いた細胞運命決定に関わる研究では、変異体のスクリーニングや完全長cDNAの導入により複数の関連因子を同定することができた。これらの多くは核内RNA代謝に機能する因子をコードしていたことから、RNA代謝異常とgig1変異体の表現型に密接な関連があることを明らかにすることができた。また、塩ストレス下での成長抑制にMYB3Rが必要であることをすでに明らかにしていたが、平成27年度は、このようなMYB3Rの生理機能に、ジベレリン信号伝達が関与している可能性を見出した。MYB3Rはジベレリン信号伝達を直接仲介していることが想定され、このメカニズムを明らかにすることができれば、ジベレリンによる成長制御の新しい分子メカニズムの解明につながる可能性がある。一方、APC/CユビキチンリガーゼやMYB3Rの標的遺伝子の網羅的同定など、一部の研究計画については、技術的な課題が残された。

今後の研究の推進方策

gig1変異体を利用した促進変異体の研究を進め、原因遺伝子をさらに同定していく。また、これまでに同定した原因遺伝子のほとんどが核内RNA代謝に関わる因子をコードしていたことから、RNA代謝とGIG1機能の密接な関連が考えられた。GIG1とRNA代謝を結ぶ分子メカニズムやその生理的な意義について明らかにしていく必要がある。APC/C基質の網羅的な同定を目指した研究では、プロテオミクスを用いた研究に加えて、バイオインフォマティクスの手法を取り入れたin silico解析により、候補タンパク質の絞り込みを行う予定である。候補タンパク質がAPC/Cの基質であるかどうかは、destruction boxに変異を導入してその効果を調べる方法のほか、APC/C阻害タンパク質を過剰発現させる系を利用して解析する。また、MYB3Rがジベレリン信号伝達に密接に関わっていることが示唆されたため、その分子メカニズムについて明らかにしていく。特にジベレリン信号伝達の鍵となるGRAS型転写因子DELLAとの間にどのような分子間の関連があるのかを解析する。DELLAとMYB3Rとの間の物理的な相互作用について、酵母ツーハイブリッドなどにより解析するほか、機能的な相互作用についても、それぞれの変異体や過剰発現体、マーカー株を組み合わせて解析する。

次年度使用額が生じた理由

クロマチン免疫沈降法を確立するための予備実験の過程で、対象とする転写因子が特殊な性質を持つため、条件の設定が予想外に困難なことが判明した。このため条件検討に予想よりも時間を要することとなった。

次年度使用額の使用計画

平成28年3月までにクロマチン免疫沈降の予備実験を終了し、4月から本実験を行う。そして平成28年6月に結果の解析を行い、7月中に研究結果を取りまとめる計画である。このため、クロマチン免疫沈降の実施に必要な予算を、平成28年4月から7月の間に使用する。

  • 研究成果

    (14件)

すべて 2016 2015 その他

すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件、 謝辞記載あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] University of London/Aberystwyth University(英国)

    • 国名
      英国
    • 外国機関名
      University of London/Aberystwyth University
  • [国際共同研究] University of Tubingen(ドイツ)

    • 国名
      ドイツ
    • 外国機関名
      University of Tubingen
  • [国際共同研究] Biological Research Centre(ハンガリー)

    • 国名
      ハンガリー
    • 外国機関名
      Biological Research Centre
  • [国際共同研究] Univ. Natural Resources Life Sci(オーストリア)

    • 国名
      オーストリア
    • 外国機関名
      Univ. Natural Resources Life Sci
  • [雑誌論文] MYB3Rs, plant homologs of Myb oncoproteins, control cell cycle-regulated transcription and form DREAM-like complexes.2015

    • 著者名/発表者名
      Kobayashi, K., Suzuki, T., Iwata, E., Magyar, Z., Bogre, L., Ito, M.
    • 雑誌名

      Transcription

      巻: 6 ページ: 106-111

    • DOI

      10.1080/21541264.2015.1109746

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Transcriptional repression by MYB3R proteins regulates plant organ growth.2015

    • 著者名/発表者名
      Kobayashi, K., Suzuki, T., Iwata, E., Nakamichi, N., Suzuki, T., Chen, P. et al.
    • 雑誌名

      EMBO J.

      巻: 34 ページ: 1992-2007

    • DOI

      10.15252/embj.201490899

    • 査読あり / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] gramming of plant cells induced by 6b oncoproteins from the plant pathogen Agrobacterium.2015

    • 著者名/発表者名
      Ito, M., Machida, Y.
    • 雑誌名

      J. Plant Res.

      巻: 128 ページ: 423-435

    • DOI

      10.1007/s10265-014-0694-3

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Rapid elimination of the persistent synergid through a cell-fusion for polytubey block.2015

    • 著者名/発表者名
      Maruyama, D., Volz, R., Takeuchi, H., Mori, T., Igawa, T., Kurihara, D., Kawashima, T., Ueda, M., Ito, M., Umeda, M., Nishikawa, S., Gross-Hardt, R., Higashiyama, T.
    • 雑誌名

      Cell

      巻: 161 ページ: 907-918

    • DOI

      10.1016/j.cell.2015.03.018

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] 塩ストレス下での成長抑制に必須なシロイヌナスナMYB3R転写抑制因子2016

    • 著者名/発表者名
      奥村徹、鈴木孝征、東山哲也、伊藤正樹
    • 学会等名
      第57回日本植物生理学会年会
    • 発表場所
      盛岡
    • 年月日
      2016-03-20
  • [学会発表] シロイヌナズナを用いた後期促進複合体APC/Cの新奇標的因子の同定2016

    • 著者名/発表者名
      鈴木俊哉、桑田啓子、伊藤正樹
    • 学会等名
      第57回日本植物生理学会年会
    • 発表場所
      盛岡
    • 年月日
      2016-03-20
  • [学会発表] 多倍数体細胞を生じるイネ変異体の解析2015

    • 著者名/発表者名
      栂根美佳、栂根一夫、寺内良平、鈴木 孝征、東山哲也、長岐清孝、伊藤正樹
    • 学会等名
      第38回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      神戸
    • 年月日
      2015-12-03
  • [学会発表] 植物特異的なGRASファミリー転写因子による細胞分裂とDNA倍数性の制御2015

    • 著者名/発表者名
      鈴木俊哉、Christian Breuer、石田喬志、鈴木孝征、東山哲也、杉本慶子、伊藤正樹
    • 学会等名
      第38回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      神戸
    • 年月日
      2015-12-02
  • [学会発表] 葯壁タペート細胞で起こるDNA倍加のメカニズム2015

    • 著者名/発表者名
      鈴木俊哉、浜村有希、東山哲也、石黒澄衛、伊藤正樹
    • 学会等名
      日本植物学会第79回大会
    • 発表場所
      新潟
    • 年月日
      2015-09-07
  • [備考] 伊藤研究グループ

    • URL

      https://www.agr.nagoya-u.ac.jp/̃bunka/ito_title%20page.html

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公開日: 2018-01-16   更新日: 2022-01-31  

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