研究課題
本研究は、主として被子植物で研究されてきた成長相転換制御の知見に基づいて、ゼニゴケをモデルに基部陸上植物の成長相転換を調べることで、陸上植物の成長相転換機構の普遍性と多様性を探ることを目的とした。ゼニゴケの有性生殖プログラムは、長日条件および遠赤色光により誘導される。光質の情報は光受容体フィトクロムにより受容される。フィトクロムは、核内で転写因PIFと相互作用し、信号伝達が行われる。ゼニゴケには1分子種のフィトクロムと1分子種のPIFが存在した。ゼニゴケは赤色光で活性化され遠赤色光で不活化される低光量応答を示す。低光量応答には、無性芽の発芽や光合成関連遺伝子の発現制御がある。フィトクロム遺伝子やPIF遺伝子を破壊すると低光量応答(LFR)が行われなくなった。生理学的な実験からゼニゴケの有性生殖誘導は、LFRではなく、遠赤色光高照射応答(FR-HIR)であることがわかった。恒常活性型フィトクロム発現株や遺伝子破壊株の研究から、FR-HIRにも同じタンパク質が関わっていること、つまり1つのフィトクロム-PIFの発現制御モジュールがLFRおよびFR-HIRを制御していることが明らかになった。さらにフィトクロムやPIFの細胞内局在やタンパク質相互作用も明らかにして、これらの成果を論文としてまとめた(Inoue et al., Plant Cell, 2016)。日長感受性経路に関しては、GI-FKF1の下流に転写抑制因子CDFが存在する。CDFおよびPIFの下流因子に存在するマスター制御因子を同定した。これは、被子植物のようにCOやFTではなく、被子植物でも配偶体世代で機能する因子であった。つまり、陸上植物は進化の過程で、環境依存的な成長相転換を配偶体世代の現象とし花を発明したことで生殖プログラムを進化させたことが分子的な解析からも示された。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Plant Cell Environ.
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
doi: 10.1111/pce.12908
New Phytologists
doi: 10.1111/nph.14487
Plant Cell
巻: 28 ページ: 1406-1421
doi: 10.1105/tpc.15.01063
http://www.plantmb.lif.kyoto-u.ac.jp/