植物の葉緑体は様々な組織および器官で機能的・形態的に多様に分化して存在しており、その機能は環境変化による複雑な制御を受けている。多様な葉緑体の機能の維持には、各葉緑体の機能に適した蛋白質セットが、適材適所適時に輸送され機能しているからに他ならない。この葉緑体への蛋白質輸送の中核を成す内包膜のトランスロコンTIC複合体に関して、我々はシロイヌナズナから1メガダルトンの超分子複合体として精製し完全同定に成功した。さらに最近TIC複合体と連携し輸送モーターとして機能すると予想される新奇7因子からなる2メガダルトンの膜複合体も完全同定している。 シロイヌナズナのTIC複合体および新たに見出した2メガダルトンのATPase膜蛋白質複合体の各構成因子に関して、機能的に重要な領域はどこか、すなわち、a) 因子間および複合体間の相互作用領域はどこか、b)輸送される様々な前駆体蛋白質の認識および相互作用領域はどこか、c)様々な環境変化で制御を受ける領域はどこか、d)外包膜のTOC複合体やストロマ側の分子シャペロン因子との相互作用領域はどこか、等について、生化学的、植物生理学的、分子生物学的、手法を駆使して迫ることを目標とした。 平成29年度の研究では、基質である前駆体蛋白質との相互作用領域の特定、外包膜TOC複合体との機能的および物理的相互作用の解析、ストロマの分子シャペロン因子群との機能的連関の解析を進め、それぞれ相互作用に直接関与すると思われる因子や作用領域に関する情報を得ることに成功した。
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