研究課題/領域番号 |
26291061
|
研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
梅田 正明 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 教授 (80221810)
|
研究分担者 |
高橋 直紀 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助教 (40553623)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 発生・分化 / 発現制御 / ゲノム / 植物 / シグナル伝達 |
研究実績の概要 |
シロイヌナズナの根において細胞分裂から分化への切り換えが起こるのはtransition zone (TZ)と呼ばれる領域である。これまでの研究で、TZにおいてサイトカイニンシグナルがオーキシンシグナルと拮抗することが示されていた。そこで、サイトカイニン情報伝達に関わるB型レスポンスレギュレーターの分解に関わるF-boxタンパク質KMDに注目して解析したところ、KMD2がTZ付近で発現することを見出した。そこで、平成27年度はKMD2の発現及び機能解析を進めたところ、KMD2の発現はDNAメチル化状態により変化し、さらにサイトカイニンの一種であるトランスゼアチン処理により低下することを明らかにした。また、KMD2の変異体では根端メリステムサイズの減少が、また過剰発現体では拡大が見られることを明らかにした。これらの結果から、TZにおいてKMD2の発現はサイトカイニンにより一定レベルで抑制され、それによりB型レスポンスレギュレーターの発現が保証され、細胞分裂から分化への転換が実現すると考えられた。さらにDNA損傷ストレスを与えた際のKMD2過剰発現体の表現型を観察したところ、DNA損傷によるメリステムサイズの減少(根の伸長阻害)が起きにくくなっていることが示された。このことは、通常植物にストレスがかかるとサイトカイニンの生合成が活性化されメリステムサイズが縮小するが、この迅速なストレス応答にはサイトカイニン依存的なKMD2の発現抑制によるB型レスポンスレギュレーターの蓄積制御が重要であることを意味している。根においてはサイトカイニンと拮抗するオーキシンの濃度勾配が細胞分裂と分化の制御、さらにはメリステムサイズの制御に重要であることが知られている。そこで、オーキシンとエピジェネティック制御との関係性を調べるため、DAPI染色によるクロマチン構造の解析も行い、オーキシンシグナルがクロマチン構造を制御する一要因となっていることを見出した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
KMDによるサイトカイニンシグナルの制御がストレス時の細胞分裂と分化の制御に重要な役割をもつことを明らかにすることができたから。
|
今後の研究の推進方策 |
オーキシンによるクロマチンの構造制御について詳細に解析するとともに、その制御に関わるエピジェネティック制御因子を特定する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
ARR遺伝子のプロモーター解析を中止し、その代わりにオーキシンによるエピジェネティック制御機構の解析を始めたため。
|
次年度使用額の使用計画 |
エピジェネティック制御機構の解析を進めるため、エピジェネティック制御因子の阻害剤や免疫染色に用いる試薬の購入、さらにChIP解析等に使用する予定である。
|