研究課題/領域番号 |
26291066
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
浮穴 和義 広島大学, 総合科学研究科, 教授 (10304370)
|
研究分担者 |
岩越 栄子 広島大学, 総合科学研究科, 研究員 (50311296)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 視床下部 / 小タンパク質 / 摂食行動 / 神経投射 |
研究実績の概要 |
我々は、鳥類や哺乳類の視床下部から分泌性の小タンパク質をコードしている新規遺伝子を発見し、その機能解析を進めている。ラットを用いて前駆体遺伝子の過剰発現や小タンパク質の慢性投与実験により、成長抑制や脂肪蓄積が生じることを明らかにしている。昨年度までに、前駆体遺伝子を過剰発現するトランスジェニックマウスを作製し、表現型解析を行ってきた。 本年度も引き続き、本トランスジェニックマウスを用いて解析を進めたが、繁殖継代を進めるにしたがって、次第に表現型が不明瞭になり、最終的に年度途中でコントロールマウスと差が認められないことがわかった。したがって、途中でこれまで進めてきた解析を断念させなくてはならなくなった。そこで、これまで野生型マウスでの新規遺伝子の解析を行っていなかったことから、原点に立ち返り、野生型マウスでの新規遺伝子及び翻訳産物である小タンパク質の機能解析を進めることとした。形態学的解析や餌によるエネルギー代謝環境を変化させ、遺伝子発現の変動解析を行った。その結果、視床下部の弓状核後外側部でのみ新規小タンパク質が産生されていること、エネルギー状態の悪い時に発現量が増加し、逆に高カロリー食摂餌下では発現量が低下することを見出した。さらに、既知の摂食抑制因子であるプロオピオメラノコルチン(POMC)産生ニューロン上に新規小タンパク質の神経線維が投射していることを見出した。最後に、脳室内に新規小タンパク質を投与すると、摂食亢進作用があることが示された。以上の解析から、新規小タンパク質は、POMCニューロンの活動を低下させ、摂食亢進作用を示すことが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
トランスジェニックマウスを用いた解析を途中で放棄せざるを得なくなったが、野生型マウスを用い、新規小タンパク質の生理機能及び作用機序の解明を達成できたため。
|
今後の研究の推進方策 |
呼吸代謝解析や摂食量を亢進させずにコントロールマウスと同じ摂食量をキープしたペアフィーディングマウスを用いることで、新規小タンパク質のエネルギー代謝調節機構の分子メカニズムを解明していく予定でいる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
初年度である平成26年度に経費の繰り越しが発生していた。本年度も途中でトランスジェニックマウスの解析を中断したため、使用額の繰り越しが生じたため。
|
次年度使用額の使用計画 |
引き続き、学術論文としてまとめるための確認実験を遂行し、早急に成果を公表できるようにしたい。さらに、ゲノム編集技術を用いた遺伝子改変動物の作製と解析を行っていく予定でいる。
|