我々は、鳥類や哺乳類の視床下部から分泌性の小タンパク質(NPGLと命名)をコードしている新規遺伝子を発見し、その機能解析を進めている。これまで、鳥類のニワトリ、哺乳類のマウスとラットで解析を進めてきた。平成29年度は、研究最終年度であるため、論文投稿・受理へ向けた再現性確認、論文投稿作業、論文リバイスへ向けた実験を行った。 まず、ニワトリのヒナを用いた先行研究では、NPGLを皮下に投与すると、摂食量に影響を及ぼさないものの体重増加作用を見出した。NPGLは脳内の視床下部領域特異的に発現しているため、脳へ作用させた際の影響を調べる必要があった。NPGLをニワトリ・ヒナの脳室内へ慢性的に投与する系を立ち上げ、慢性投与を行った。その結果、摂食量、飲水量、体重を増加させる作用が認められ、NPGLが摂食や成長に関与していることを見出した。 マウスにおいては、前年度にNPGL神経線維の視床下部内での投射部位を解析したところ、POMCニューロンに投射していることを見出している。そこで、脳室内にNPGLを投与して摂食行動を解析したところ、摂食量を増加することを見出した。 最後に、ラットを用いた解析から、普通食ではNPGLの摂食亢進作用は弱いが、高ショ糖高脂肪食の高カロリー食摂餌かでは、顕著な摂食亢進作用を示すことを見出した。 以上の解析から、NPGLは鳥類や哺乳類で共通して、摂食行動を含むエネルギー代謝調節に関与している可能性が示唆された。
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