研究課題/領域番号 |
26291072
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研究機関 | 基礎生物学研究所 |
研究代表者 |
中山 潤一 基礎生物学研究所, クロマチン制御研究部門, 教授 (60373338)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 遺伝子 / 発現制御 / ヘテロクロマチン / 分裂酵母 / ユビキチン化 |
研究実績の概要 |
真核生物の染色体機能に必須なヘテロクロマチン形成の分子メカニズム解明を目指して、本年度は以下の2つの項目の研究を遂行した。
【研究項目1:CLRC複合体の機能解析】分裂酵母のヒストンメチル化酵素であるClr4は、 Rik1、Cul4、Raf1、Raf2とともにCLRC複合体を形成しており、ユビキチン化との関連が示唆されているがその詳細は不明であった。平成27年度までにヒストンH3の14番目のリジンがCLRCによって優先的にユビキチン化されることを見出した。本年度はこの知見に基づき、H3のユビキチン化がどのようにClr4のメチル化活性に影響を与えるのか検証した。CLRC複合体によってユビキチン化されたH3N-GST、また人工的に合成したK14ユビキチン化H3を基質にしてin vitroでメチル化アッセイを行った。その結果、ユビキチン化修飾の存在によってClr4のメチル化活性が促進されることを見出した。一方、H3K9me3の存在はCLRCのユビキチン化活性にほとんど影響を与えないことが明らかになった。以上の結果から、H3K14のユビキチン化が先に起こり、その後でH3K9のメチル化が導入されるという段階的な分子機構の存在が示唆された。
【研究項目2:ヒストンH3のユビキチン化動態の解析】平成27年度までの研究によって、分裂酵母のヘテロクロマチン領域にH3K14のユビキチン化修飾が存在していることを明らかにした。本年度はこの知見に基づき、H3ユビキチン修飾の動態解析を試みた。実際に温度感受性のcdc25-22株を用いて細胞周期を同調させてH3ユビキチンの動態を解析したことろ、ユビキチン化H3の量が細胞周期のS期周辺で増加することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでユビキチン化との関連が示唆されながら、その基質についてまったく明らかにされていなかったCLRC複合体に関して、詳細な生化学的解析、また遺伝学的な解析を組み合わせることで、ヒストンH3が基質になること、またユビキチン化されたH3がClr4のメチル化活性を促進することを明らかにすることができた。これ等の結果は、ヘテロクロマチン形成とユビキチン化の関係解明につながる画期的な成果であると高く評価できるため。
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今後の研究の推進方策 |
本研究提案では、ヒストンH3のユビキチン化修飾の存在によってClr4のメチル化活性が促進されることを見出した。これがどのようなメカニズムで起きるのか、構造学的な解析も含めてその活性制御の分子メカニズムを解明することが最優先事項だと考えられる。また、高次クロマチン構造形成におけるヒストンのユビキチン化とメチル化のクロストークが、進化的に保存されているかどうか検証することも重要だと考えられる。本研究によって分裂酵母のヘテロクロマチン領域にH3のユビキチン化修飾が存在することを明らかにしたが、今度ユビキチン化H3の特異抗体を作製し利用できれば、ユビキチン化修飾の動態をさらに詳細に解析できると期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の所属機関が名古屋市立大学から基礎生物学研究所に変更になり、研究室の移動とその後の立ち上げのために数ヶ月間研究が実施できず、当初計画した研究に遅延が生じたため。
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次年度使用額の使用計画 |
上記理由によって補助事業期間を延長する申請が承認されており、最終年度で計画していたヒストンH3のユビキチン化動態の解析を遂行し、H3ユビキチン化修飾と細胞周期の関係、また脱ユビキチン化酵素の関与を明らかにする。
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