研究実績の概要 |
真核細胞の進化の原動力である「細胞内共生」は、現在も繰り返して行われ、新たな細胞の構造と機能の獲得が進行している。21世紀の細胞の進化の研究は、細胞内共生を行なった祖先細胞のルーツの探索を目的とした従来の研究に代わり、細胞内共生成立の分子機構を解明し、得られた情報を利用して任意の細胞の組み合わせで細胞内共生を人為的に誘導する革新的な技術開発へと発展するであろう。我々は、大量の細胞に同調して真核細胞どうしの細胞内共生(二次共生)の誘導が可能な単細胞生物繊毛虫のミドリゾウリムシとその共生クロレラを使い、二次共生の成立に必須な4種のチェックポイントを発見した (Kodama, Fujishima, 2005)。本研究ではこれらチェックポイントの分子機構の解明と、他の二次共生との共通の調節機構の存在の有無を調べた。具体的には、共生クロレラの有無によって発現が変化する宿主遺伝子の産物のモノクローナル抗体とポリクローナル抗体を作製し、間接蛍光抗体法で抗原の細胞内局在性と感染過程での量的変化を可視化して、クロレラ保持する緑色細胞とクロレラを除去した白色細胞を比較して抗原の機能を推測した。また、緑色細胞に特異的なクロレラ包膜特異的モノクローナル抗体を使用し、食胞膜由来のクロレラ包膜の分化過程での抗原の出現時期を明らかにした。さらに、共生クロレラが宿主細胞表層に接着する原因がクロレラ包膜が宿主細胞表層直下のミトコンドリア膜と接着することであることを、クロレラとクロレラ包膜とミトコンドリアの複合体を単離して、クロレラ包膜とミトコンドリアを蛍光色素で可視化することによって証明した。
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