研究課題/領域番号 |
26291075
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研究機関 | 公益財団法人国際科学振興財団 |
研究代表者 |
岡田 典弘 公益財団法人国際科学振興財団, シーラカンス研究所, 所長 (60132982)
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研究分担者 |
西原 秀典 東京工業大学, 生命理工学研究科, 助教 (10450727)
二階堂 雅人 東京工業大学, 生命理工学研究科, 准教授 (70432010)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 進化 / エンハンサー |
研究実績の概要 |
これまでに哺乳類の脳および二次口蓋の進化に関与した2つのエンハンサーを発見し、それらを欠損させたノックアウトマウスを確立した。そのうち大脳新皮質特異的なAS021エンハンサーの欠損マウスを用い、Satb2、Ctip2、Lmo4などの発現パターンを免疫染色で解析した。またKOマウスにおける神経束の構造を明らかにするため、NPYやTAG1等の抗体を用いた免疫染色もおこなった。一方、二次口蓋の形成過程で機能するAS3_9エンハンサーの解析を、当初の予定を繰り上げて開始した。比較ゲノム解析および反復配列の詳細な解析から、AS3_9エンハンサー配列が複数のレトロポゾンやDNAトランスポゾンに由来し、その機能も哺乳類の進化過程で段階的に確立されたことを明らかにした。このエンハンサーの欠損マウスでは野生型と比較して制御対象遺伝子の発現パターンに異常が見られている。現在はノックアウトマウスにおける口蓋形成の異常を明らかにするため、組織学的な解析をおこなっている。以上のように哺乳類の脳と二次口蓋の進化において重要な役割を果たしてきたエンハンサーに関して、その役割を明らかにした。陸上動物出現の分子基盤に関しては、シーラカンスゲノムを基盤とした比較ゲノム解析をおこなった。シーラカンスと哺乳類で保存された領域が数万箇所存在することから、その中でエンハンサーの候補領域の絞り込みをおこなっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
哺乳類特有の形態形成機構のうち大脳新皮質形成に関与するエンハンサー解析については順調に進んでおり、さらに二次口蓋特異的エンハンサーの欠損マウスの解析も予定より早く開始することとなった。またシーラカンスゲノム情報に基づいた大進化研究に関しても四足動物との間で保存された領域の解析が進んでいることから、本研究は概ね計画通りに進行していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに引き続き、哺乳類進化に関しては、大脳新皮質および二次口蓋に特異的な各エンハンサーの欠損マウスの解析を進める予定である。特にそれぞれの発生異常に着目し、胎生期および出生直後のマウスの各組織を用いて、免疫染色による発現異常、および組織染色による形態異常解析を継続する。またシーラカンス研究に関しては、四足動物との間で保存された非コード領域を詳細に解析し、四肢の発生に関与する遺伝子のエンハンサーを推定する。さらに本研究では闘争行動進化の分子基盤にも着手する。個体間での種内競争は高等脊椎動物で普遍的に存在することから、その分子遺伝学的な基盤を明らかにすることは極めて重要である。本研究では闘魚の闘争前後における脳の遺伝子発現変化をトランスクリプトーム解析から明らかにし、闘争の分子基盤の解明を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究協力者を年度をまたいで(3月21日から4月20日まで)雇用するため,新年度用の雇用費とした。
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次年度使用額の使用計画 |
研究協力者の雇用に使用する。
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