基盤研究B「大進化の分子機構の解明」のテーマの中で、闘魚関連の研究が論文作成途中であったので、本来は28年度で終了であったところを一年間延長した。闘魚は狭い水槽にオスを二頭入れておくと、1時間以上取っ組み合いの喧嘩をする。その闘魚の脳を単離し、RNAを抽出してRNA-seq分析を行ったところ、約2万の転写産物がシンクロナイズすることが明らかになった。今まで一対のペアーの脳の転写産物がシンクロナイズするということを示した研究者は存在しなかったので、これは非常に面白い現象である。論文を作成したが、分析の個体数が少ないということで、台湾のアカデミアシニカのリー教授と共同で個体数を増やし塩基配列の決定を行った。これで、闘う前が5個体、20分の戦いが5ペアー(10個体)、60分の戦い5ペアー(10個体)、で総計25ライブラリーの塩基配列が得られ、現在再解析の最中である。興味ふかいことは、戦っているときにいつも共通にシンクロナイズされる遺伝子と、あるペアーに特異的にシンクロナイズする遺伝子があることである。記憶や意欲に関わる遺伝子がシンクロナイズしていることが見出された。これはお互いの個体が戦いそのものを記憶しなければならないこと、一方の意欲に引きずられて他方も同様の意欲を持つ、という戦いの性質を反映しているものと思われる。
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