研究課題/領域番号 |
26291076
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
横山 潤 山形大学, 理学部, 教授 (80272011)
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研究分担者 |
福田 達哉 高知大学, その他の研究科, 准教授 (00432815)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 植物 / 真菌 / 寄生 / 共生 / 進化 |
研究実績の概要 |
真菌エンドファイトは植物の防御機構誘導や成長促進などの効果をもつ重要な共生者である。寄生植物にも真菌エンドファイトの存在が知られているが、寄生植物と菌類の種間関係、ホストとの三者間の関係などはほとんどわかっていない。本研究では、真菌エンドファイトが寄生植物と具体的にどのような関係にあり、そのことがホストとの関係性にどう影響するのかを明らかにするために、寄生植物の真菌エンドファイトフロラの構成とホストとの比較と、真菌エンドファイトの寄生植物の適応度への影響の評価を行い、これらの結果から総合的に寄生植物と真菌エンドファイトの多様な共生関係の進化過程を明らかにすることを目的としている。研究系として、4つの寄生植物―ホスト系を用いた。これらから培養可能真菌エンドファイトの単離比較を行なった。単離した菌株は、ITS領域の塩基配列の決定により分子同定を行なった.その結果、全ての系でホストの方が真菌エンドファイト相が多様であった。寄生植物にはホストと同じ菌種の他に、寄生植物独特の菌種も存在している事が示された。これらは、ホストへの感染およびその後のホスト上での成育に際して何らかの役割を果たしている可能性があると期待される。また、これら候補培養菌株を持ちいてGH32遺伝子と分泌性chitinase遺伝子の単離を試みた。これらの遺伝子と寄生植物との関係(ホストと共通か寄生植物特異的か)の間には明瞭な関係性は認められなかった。各寄生植物のホストとなる植物を育成し、寄生植物の種子を採集して感染実験の準備を行なった。このうち、ヒノキバヤドリギについてはツバキを用いた予備的な感染実験を行ない、条件の検討を試みた。その結果、種子の乾燥を防ぐことができれば、比較的簡単な操作で感染させる事ができる事が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度行なう予定であった高速シークエンスによるメタゲノム解析は、特殊な植物からのDNA抽出である事から、解析に使用可能な質のDNAを一定量確保する事に時間がかかってしまい、年度内にデータを得る事ができなかった。この点では当初の計画より遅れてしまったことになる。また、共生系に関連する遺伝子の解析も当初の計画より十分進んだとは言えない状況にある。一方、培養可能真菌エンドファイトフロラの調査は、当初の予想よりも重要な成果が得られたと考えられる。また、感染実験の準備に際しては、予備的実験を実施する事もでき、平成27年度の実験を当初の予定よりスムーズに進める事ができると考えている。これらを総合的に評価すれば、研究全体としてはおおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度行なう予定であったメタゲノム解析については、既に委託中で平成27年度の遅くとも最初の四半期にはデータが得られる予定であるので、この解析を早急に進めて、感染実験の実施までには培養で得られなかった真菌エンドファイトの洗い出しを済ませる。共生系に関連する遺伝子の解析も、未解析の単離菌株を用いて早急に進める。一方感染実験の準備は、平成26年度の間に予定よりも進める事ができたので、その成果を受けて今年度は実際に解析に用いるための寄生植物を育成し、得られた培養菌株および植物の抽出液を用いた真菌エンドファイトの感染実験を実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末の段階で未請求だった人件費の計算の際、事業所負担分の保険経費を二重に差し引いたため生じた差額。
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次年度使用額の使用計画 |
主に感染実験のための消耗品費として使用する予定。
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