研究分担者 |
藤倉 克則 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海洋生物多様性研究分野, 分野長 (10344293)
小島 茂明 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (20242175)
狩野 泰則 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (20381056)
渡部 裕美 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海洋生物多様性研究分野, 技術主任 (50447380)
中野 智之 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 助教 (90377995)
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研究実績の概要 |
最終年度は、過去に研究してきた様々な分類群の成果をまとめるとともに、追加のデータ収集を行った。以下の分類群の系統地理解析のデータは出版物として公表された。(1)従来コガモガイとして同定されてきた種はミトコンドリアCOI遺伝子では2つのクレードに分かれる。形態でも南北で歯舌の成長様式に差があることを報告していたが、それらに対応する分類群であるため、、Lottia kogamogai, Lottia goshimaiの2種に区別し、新種記載した。(2) Limacina helicinaの北太平洋広域における遺伝的多様性が明らかになった。従来は、L. helicina helicina, acuta, pacifica, ochotensisという異なるformが提唱されていたが、形態的可塑性によるものか遺伝的分化によるものか不明であった。COI遺伝子のデータからは、海域ごとに遺伝的分化があることが支持された。(3)地理的構造の形成には幼生の分散様式が重要であると考えられるが、深海性種の場合、実際に幼生の分布を観察することが容易ではない。人為的に設置した着底基盤を回収する方法で得られたサンプルの遺伝的多様性を調べることにより、幼生分散が重要であることが示された。貝類ではLepetodrilus nuxのデータが出版された。現在投稿中あるいは投稿準備中のデータとしては以下のような分類群を研究している。(1)日本と韓国のスガイのCOI遺伝子の遺伝的多様性を調べた結果、少なくとも4つのハプログループに分かれ、それらは地理的な分布域にも違いが見られる。(2)イソニナのCOI遺伝子のデータからも地理的な分化があることが示されている。(3)中国のイシダタミが5つのハプログループに細分され、それらは2つの大きなグループに分かれるが形態からも2つのグループ識別できる。上記の研究例から、東アジアに広く分布する種は、国外のデータも取得した上で解析し分類を見直す必要があることが示唆される。
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