研究課題
我々は、ヘビからカエルに水平伝播したLINE (Long Interspersed Nuclear Element)レトロトランスポゾンを発見した(ここではTE-Xとする)。本研究は、水平伝播の起源系統と発生地域を特定、さらに、発生年代を推定することを目的としている。さらに、ヘビ・カエルTE-X水平伝播では、捕食者から被捕食者へという奇妙な方向から、伝播を媒介したベクター生物が存在することが強く示唆される。そこで本年度は、ベクター生物の特定を行うことを主たる目的として研究を実施した先年に続き、日本とマダガスカルから寄生性・吸血性の動物を収集し、最終的に、5つの動物門に属する155のサンプルを得た。これらは、主にヘビとカエルの体表・体内から収集したが、一部は哺乳類から、または、自由生活している個体を採取した。これらのサンプルからPCR法でTE-Xの有無を調査した。その結果、日本では7%、マダガスカルでは55%のサンプルがTE-X陽性であった。増幅されたTE-XをPacBio RSII 次世代シークエンサーで解析し、先に得ていた爬虫類・両生類のTE-Xデータを合わせて分子系統解析を行った。その結果、日本産のリュウキュウカジカガエルの体内から単離した線虫のTE-Xは、同じく日本産のアオダイショウと極めて似ていることがわかった。さらに、マダガスカルガエル科のカエルで吸血していたツツガムシのTE-Xが、マダガスカルクチキヘビ亜科のTE-Xと姉妹群になるという結果が得られた。これらは、線虫やツツガムシがヘビからカエルへの水平伝播を仲介した直接的な証拠と考えられる。また、ヒトの皮膚に付着していたヒルから、マダガスカルガエル(イロメガエル属)型のTE-Xが発見された。この結果は、TE-Xは複数の寄生虫・吸血性動物の仲介により、幅広い脊椎動物分類群に伝播していることを示唆するものであった。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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Ecological Research Monographs
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
PeerJ
巻: 5 ページ: e3011~e3011
doi: 10.7717/peerj.3011
Evolution
巻: 71 ページ: 449~457
DOI: 10.1111/evo.13118