研究課題/領域番号 |
26291083
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研究機関 | 千葉県立中央博物館 |
研究代表者 |
宮 正樹 千葉県立中央博物館, その他部局等, 研究員 (30250137)
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研究分担者 |
杢 雅利 東京大学, 大気海洋研究所, その他 (30416466)
岩崎 渉 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (50545019)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 次世代シーケンサ / 中・深層性魚類 / ミトゲノム全長配列 / 系統 / 集団構造 |
研究実績の概要 |
1) ミトゲノム全長配列の大量並列シーケンシング技法の確立;2) 大量データ処理・解析のパイプラインの確立;3) 主要分類群のミトゲノム全長配列の網羅的決定および系統解明;4) 北西太平洋における優占種集団のミトゲノム全長配列の決定および種内集団構造の解明;5) 魚類全体における中・深層性魚類の起源と進化に関する全体像の提示の五つテーマを段階的・同時並行的に達成することを目標とした. 初年度は中・深層性魚類サンプルの網羅的収集を行い,これまでに太平洋を北から南まで縦断する計21測点において,中層トロールにより計1,164個体の魚類を採集した.これらの魚類全個体からDNA抽出を行い,魚類環境DNAで開発したMiFishプライマーを用いたメタバーコーディング解析を行った.抽出DNAを測点毎にプールし,ミトコンドリア12S遺伝子の約170bpを増幅し,多種の増幅産物を含むライブラリに基づきイルミナ社のMiSeqによる超並列解析を行った.その結果,21サンプルから計314,291リードが得られ,それらの種判別をBLASTNを用いて行った結果,計106種が97%以上の一致率で検出された. 上記1のミトゲノム全長配列の大量並列シーケンシング技法の確立については,その根幹となるロングPCRが比較的容易なチョウザメ類を用いて予備的解析を行った.チョウザメ類24種のロングPCR産物を用意し,それらのロングPCR産物をNexteraXTキットを用いて断片化とインデクスの付加を行った.イルミナ社のMiSeqを用いて超並列シーケンスを行ったところ,計100万以上のリードが得られアセンブルを行ったところ,1種を除く計23種のミトゲノム全長配列をx20程度の重複で決定することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の根幹をなす中・深層性魚類の網羅的収集が,太平洋の南北を結ぶ計21の測点において無事終了した.また,本研究課題がまずクリアしなければならない目標の一つ「ミトゲノム全長配列の大量並列シーケンシング技法の確立」が達成されたことは大きな成果であろう.さらには,魚類環境DNAで開発したメタバーコーディング的手法が,ネットサンプルで採集された魚類の各個体から抽出されたDNAをプールすることにより,環境DNAと同様に見事に適用できた.このような手法が採集物の傷みが激しいネットサンプルで成功した意義は大きく,今後この世界で解析法の主流となる可能性が出てきた.
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今後の研究の推進方策 |
ミトゲノム全長配列の大量並列シーケンス技法は確立できたものの,中・深層性魚類ではロングPCRの成功率が低く,この問題点をクリアする必要がある.全DNAから直接 Nextera 等のキットをつかって断片化・インデクスの付加を行い,それを MiSeq でシーケンスし,アセンブルされたゲノム配列からミトゲノム全長配列を抜き出す手法を試みる必要があろう.また,メタバーコーディング解析においては,リファレンスシーケンスの不足が問題となった.証拠標本を伴う抽出DNAから,網羅的にリファレンスシーケンスを決定することによりこの問題を解消したい.
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品が年度末にキャンペーンにより予定より安く購入できたために生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
円安により値上がりした試薬の購入費に充当する.
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