研究課題/領域番号 |
26291084
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研究機関 | 独立行政法人国立科学博物館 |
研究代表者 |
細矢 剛 独立行政法人国立科学博物館, 植物研究部, グループ長 (60392536)
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研究分担者 |
保坂 健太郎 独立行政法人国立科学博物館, 植物研究部, 研究主幹 (10509417)
田中 和明 弘前大学, 農学生命科学部, 准教授 (60431433)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ビョウタケ目 / 生物多様性 / 分類 / 新種 / 新産種 / クロイボタケ綱 / プレオスポラ目 |
研究実績の概要 |
日本で欧米既知種に同定されているものには,欧米産のものとは遺伝子レベルで差異があることもあり,分類学的実体の同一性は確認できていないことが多い。そこで,日本を中心とした極東地域において,形態学的方法に加え,分子系統学的手法によって,欧米種との比較により分類学的実体を解明し,正しい菌類相を明らかにし,分子系統学的情報とともに世界に発信する。 日本産の種とヨーロッパ産の種を比較する目的で,盤菌類については,欧州産の子嚢菌類を採集・培養し,遺伝子情報を得た。Mollisia属および類縁菌に注目し,欧州産の標本由来の遺伝子配列とともに,日本産の類縁菌の遺伝子配列情報を解析したところ,日本産の株とほぼ遺伝子が一致するものが複数得られた。これらは,広域に分布する種と考えられる。同様のことはLachnum属において見出され,予想した通り,ビョウタケ目の中には広域分布する種と隔離的に分布する種が混在する可能性が示された。 一方、小房子嚢菌類に関しては、日本独自の菌類相を解明する目的で、採集調査より240菌株を新たに分離した。分子系統解析に基づいた広義ロフィオトレマ科の分類学的再検討を行い、タケ類に寄生する日本独自の系統群を見いだすとともに、本菌群が無性生殖世代の形態を異にする4科へと分割されるべきであることを見いだした。また、従来単一種として扱われてきた Lophiostoma bipolare が、5属11種からなる種複合体であり、それらが日本に広く分布していることを明らかにした。以上を含め、おもにクロイボタケ綱・プレオスポラ目に所属する菌の系統分類を進め、4新科・15新属・22新種・6新組み合わせの新規分類群を提唱した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
シークエンスを行う上での適切な人材が見いだせなかっため、シークエンスデータの取得に若干の遅れが生じた。一部の地方での採集が十分行なえなかった。
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今後の研究の推進方策 |
日本において、欧米産菌類と同一種であると同定されている菌は多い。特に菌類の宿主植物が近縁である場合、寄生菌に顕著な形態的差異が認められない限りは、同一種とされてきた。しかし本研究により、日本には独自の菌類相が存在していることが明らかになりつつある。日本産菌類の独自性をさらに明確にするためには、古くに記載されている欧米産類似種との比較が必要となる。しかし、一般的に古い年代の菌種には塩基配列情報の取得に必要な培養株が存在しない。よって、海外の共同研究者との連携のもと、欧米産類似種の新鮮な標本(基準標本との比較をしたエピタイプ標本)を収集し、それに由来する培養株を取得することで、DNAレベルでの証拠に基づいた比較検討を進めていく必要がある。人材が雇用できる見込みになったため、シークエンスデータの取得については、ほぼ挽回できる見込みである。若干の追加的材料採集を行い、データをまとめたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
シークエンス業務を委託するのに適切な人材が見つからなかったため、作業が遅延した。また、業務上の都合がつかず、一部の地域での採集に遅れが生じた。ともに挽回できる見込みができたため、次年度は補助的採集・シークエンスとこれに伴う消耗品の購入などにあてる見込みである。
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