研究課題/領域番号 |
26291085
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研究機関 | 独立行政法人水産総合研究センター |
研究代表者 |
桑田 晃 独立行政法人水産総合研究センター, 東北区水産研究所, グループ長 (40371794)
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研究分担者 |
吉川 伸哉 福井県立大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (20405070)
佐藤 直樹 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (40154075)
中村 洋路 独立行政法人水産総合研究センター, その他部局等, 主任研究員 (90463182)
沢田 健 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (20333594)
一宮 睦雄 熊本県立大学, 環境共生学部, 准教授 (30601918)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 藻類 / 進化 / 珪藻 / プランクトン / ゲノム |
研究実績の概要 |
珪藻は、微細藻類ながら熱帯雨林と同等の炭酸固定を行う海洋で最も重要な一次生産者であるが、その起源・繁栄機構は依然不明である。本研究は、珪藻と共通の祖先から進化したパルマ藻を対象に、1.シリカの殻形成と細胞分裂機構の解析、2.生活史とその制御機構の解明、3.核ゲノムの解読、4. 分子化石(バイオマーカー)の特定と海洋堆積層の分析による出現時期の生物地球化学的解析によりパルマ藻の生物学的特性を明らかにすることを目的とし、パルマ藻と珪藻両者の特性を比較することによりの両者の進化過程と繁栄機構の解明を目指している。 本年度は1. シリカ殻形成と分裂機構の解析については、細胞内での珪酸質のプレート形成過程と細胞分裂過程における微小管形成および核分裂様式の解明を電子顕微鏡観察により行った。また、典型的な殻をもつ細胞とシリカ欠乏下でシリカの殻を形成しない裸細胞、両者での遺伝子発現の網羅的解析を進めた。2.生活史とその制御機構の解明については、パルマ藻による極近縁のボリド藻に類似した鞭毛を持つステージへの誘導条件の探索のため、様々な温度・光・栄養条件下で培養し検討した。3.ゲノム解析については、既に次世代シーケンサーにより解読されたゲノム配列データより核ゲノム内の遺伝子を特定し、特定された遺伝子の機能予測を進めた。4.分子化石を用いた生物地球化学的解析については、先行研究によりパルマ藻固有のバイオマーカーとして抽出された分子種の同定を進め、既に報告されている珪藻類のバイオマーカーとの比較検討を行った。さらに、バイオマーカー分子の海洋堆積物中での続成変化とその生成物を明らかにするため,堆積物の環境を模した熱熟成シミュレーション実験を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究では、珪藻と共通の祖先から進化したパルマ藻を対象に、1.シリカの殻形成と細胞分裂機構の解析、2.生活史の制御機構の解明、3.核ゲノムの解読、4. 分子化石(バイオマーカー)の特定と海洋堆積層の分析による出現時期の生物地球化学的解析を行っており、どの項目においても当初の計画通り順調に成果が得られていると判断する。また、シリカの殻形成については、網羅的遺伝子発現解析が新学術領域研究「ゲノム支援」による支援課題として採択され、次世代シーケンサーによる大量の遺伝子発現データが取得でき、当初の計画以上に進展した。また、得られたデータは、核ゲノムの遺伝子解析にも活用された。
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今後の研究の推進方策 |
1. シリカ殻形成と分裂機構の解析については、今年度に得られた遺伝子発現データを用いてパルマ藻のシリカの殻形成における遺伝子発現の解析を進め、典型的な殻をもつ細胞とシリカの殻を形成しない裸細胞れぞれのタイプで特異的に発現する遺伝子を特定する。 2. 生活史とその制御機構の解明 については、引き続き、パルマ藻による極近縁のボリド藻に類似した鞭毛を持つステージへの誘導条件の探索のため、様々な温度・光・栄養条件下で培養し応答を調べる。また、各生活史のステージの核相の推測をフローサイトメトリ-による細胞内のDNA含量と細胞サイズの変化の計測、およびこれまでに得られたゲノムデータの解析により進める。 3. パルマ藻の核ゲノムの概要の解読による生物特性の解明については、引き続き特定された核ゲノムの遺伝子の機能予測を進め、パルマ藻の光合成過程・栄養塩取り込み過程などの主要代謝経路およびパルマ藻と珪藻に特異的なシリカの殻形成過程等の構築を行う。 4. 分子化石を用いた生物地球化学的解析については、引き続き パルマ藻と珪藻の生体成分として検出されたバイオマーカー分子の海洋堆積物中での続成変化とその生成物を明らかにするための人工的な続成シミュレーション実験を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度開始準備予定であったパルマ藻の網羅的遺伝子発現解析が新学術領域研究「ゲノム支援」による支援課題として採択され「ゲノム支援」により解析が行われることとなり、当初予定していた解析に必要な試薬などの消耗品費用の支出が抑えられ繰越となった。また当初は、国際学会の参加、パルマ藻のゲノム解析のフランスの共同研究者との研究打ち合わせ等を予定し旅費を計上していたが、来年度以降の実施となり繰越となった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に継続して行うパルマ藻のゲノム解析を加速させるため、国内外の研究者間の研究打ち合わせ旅費、ゲノム解析システムの強化費用、解析結果の状況によっては、補足ゲノム情報の取得のための費用に当てる。
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