研究課題/領域番号 |
26291086
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
齊藤 隆 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 教授 (00183814)
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研究分担者 |
荒木 仁志 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (20707129)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 生物多様性 / 集団遺伝学 / 国際研究者交流 / スウェーデン |
研究実績の概要 |
研究代表者が提唱する遺伝的多様性の維持機構に関する仮説に基づく第1の予測「メスの分散距離が短いので,母系遺伝をするミトコンドリアDNA に基づく集団構造は核DNAに基づく構造よりも小さい」について石狩湾沿いのエゾヤチネズミ個体群を対象に分析し,予測を支持する結果を得,日本生態学会でその研究成果を発表した. 第2の予測「オスは様々な集団から移入してくるので,オスの集団はメス集団よりも多様な ミトコンドリアDNAを持つ」について石狩湾沿いのエゾヤチネズミ個体群を対象に分析し,予測を支持する結果を得,日本生態学会でその研究成果を発表した. 第3の予測「個体群が大発生すると移動性が促進され遺伝的多様性が高まる」を検証するために個体数が大変動するスウェーデンの個体群を分析するため,スウェーデン農科大学が保有するヤチネズミの標本を共同で分析するプロジェクトを開始させた.研究代表者らが同大学を訪れ,約2000個体の組織サンプルを採取し,北海道大学に持ち帰った. 持ち帰ったサンプルを整理し,捕獲記録と照合した.捕獲記録を分析した結果,スウェーデン個体群は 0.5 ha あたり 0-20 個体で変動し,ほぼ3年周期で高密度になる年が見られた.北海道の個体群と比較すると,平均的な密度はスウェーデン個体群で低く(北海道個体群の約三分の一),地域間の同調と周期性がスウェーデン個体群でより明瞭であった.スウェーデン個体群と北海道個体群は同種であるが,個体数の変動パターンにこのような違いが見られ,これが個体群の遺伝的な構造にどのような影響を与えているのかを次年度以降に分析する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者が提唱する遺伝的多様性の維持機構に関する仮説に基づく主要な3予測のうち,「メスの分散距離が短いので,母系遺伝をするミトコンドリアDNA に基づく集団構造は核DNAに基づく構造よりも小さい」と「オスは様々な集団から移入してくるので,オスの集団はメス集団よりも多様なミトコンドリアDNAを持つ」を支持する結果を得て,研究成果を学会で発表した.
また,第3の予測「個体群が大発生すると移動性が促進され遺伝的多様性が高まる」を検証するために,その基盤となるスウェーデンのヤチネズミ個体群を分析するため体制を整えることができ,検証の見通しがたったため.
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今後の研究の推進方策 |
遺伝的多様性の維持機構に関する仮説「メスの分散距離が短いので,母系遺伝をするミトコンドリアDNA に基づく集団構造は核DNAに基づく構造よりも小さい」と「オスは様々な集団から移入してくるので,オスの集団はメス集団よりも多様なミトコンドリアDNAを持つ」に関する研究成果を学術雑誌で発表する.
第3の予測「個体群が大発生すると移動性が促進され遺伝的多様性が高まる」を検証するために,大変動を繰り返すスウェーデンのヤチネズミ個体群を分析する.スウェーデンの個体群の特性を知り,分析を深めるためにスウェーデン農科大学の共同研究者を招聘して,シンポジウム,セミナー等を開催する.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画に基づいて予算は予定額の全額を執行したが,決算が年度内に終了することができずに,表面上は次年度に繰り越しとなった.
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次年度使用額の使用計画 |
予定の全額はすでに計画とおりに執行している.
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