mtDNAとncDNAの多様性は,理論上,mtDNAの方が著しく低くなると予想されている。これを実証するために,哺乳類,鳥類個体群の観察と個体群構造の分析を行った。その結果,予測とは異なり,多くの個体群でmtDNAの多様性がncDNAよりも高かった。これは,突然変異率がmtDNAでより高いという性質で説明できたが,データの大きなばらつきは個体数変動の結果であると考えられた。哺乳類,鳥類間の違い(哺乳類でmtDNAの多様性がより高い)は,分散行動の性差の違いで説明できた。これらの結果は,遺伝的多様性の維持機構において個体群構造が重要な機能を持つという報告者の仮説を支持するものである。
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