研究課題/領域番号 |
26291088
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
吉田 丈人 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (40447321)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 進化 / 表現型可塑性 / トレードオフ / 藻類 / 適応 / 数理モデル |
研究実績の概要 |
適応のダイナミクスと生態のダイナミクスが密接に関連する「生態-適応フィードバック」の理解を、「種内多様性の具体性」の新しい視点から深化させることを目的としている。具体的には、以下の三つの研究課題を設けている。【研究1】種内変異の具体的な分布パターンにより異なると予測される生態-適応フィードバックの実態解明、【研究2】複数形質の関係(トレードオフvs.シナジー)がもたらす生態-適応フィードバックの改変の理解、【研究3】環境変動の時間スケールに依存する適応メカニズム(進化vs.可塑性)の重要性と生態-適応フィードバックへの影響の理解、である。 今年度の成果について以下にまとめる。 【研究1】種内変異として、防衛形質と競争能力における遺伝的なトレードオフに着目し、トレードオフのわずかな形の違いが生態-適応フィードバックに与える影響について、室内実験により実証と数理モデルによる理論の両面から検討した。防衛のコストが高いトレードオフと、コストが低いトレードオフでは、進化と個体数のダイナミクスが異なっていることがわかった。またこの研究の過程で、個体数の振動ダイナミクスにおける双安定性の理論的な発見もできた。 【研究2】複数形質として被食者である藻類の防衛形質に着目し、緑藻のイカダモが発現する群体と集塊の形質を対象とした。捕食者カイロモンへの曝露実験により、群体と集塊の発現過程が明らかとなった。当初予想していた単純なトレードオフやシナジーの関係ではなく、群体が発現したのちに、群体が集合して集塊が発現するという関係であることがわかった。 【研究3】表現型可塑性と進化を比較するための実験に必要な藻類株の選抜をすすめ、顕微鏡下では区別できない藻類を定量的に測定するための方法開発に取り組んだ。一定の進捗はあったものの、想定していた水準には達しておらず、今後の課題として残った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究1は当初の予定より進捗が早く、研究2は予定通りの進捗であり、研究3は予定より少し遅れている。総合すると、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
研究1については当初の予定より早く進捗したので、今後は研究2と研究3に主に取り組む。研究2は当初の予定通りに進めるが、研究3については実験準備に課題が残っているので、数理モデルによる理論研究を先に進めることとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
表現型可塑性と進化を比較するための実験の進捗が当初の予定より遅れたことにより、当初の予定より支出額が低くなった
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次年度使用額の使用計画 |
被食者の複数形質による防衛の影響を評価する実験に主に取り組むため、その実験に必要な物品購入費に使用を計画している
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