研究課題/領域番号 |
26291093
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
山平 寿智 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 教授 (20322589)
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研究分担者 |
北野 潤 国立遺伝学研究所, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (80346105)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 種分化 / 性淘汰 / メダカ / スラウェシ |
研究実績の概要 |
熱帯では,強い性淘汰がオスの二次性徴形質の急速な進化を促進するという実証研究が蓄積しつつある.しかし,性的二型に内在する遺伝子座内性的葛藤が,熱帯の生物でどのように解消されているのか,その遺伝基盤は不明である.本研究では,性染色体の置換が起こった場合,新しい性決定遺伝子の近傍に新たな性的拮抗遺伝子の連鎖不平衡状態が再構築され,二次性徴形質の急速な進化が生じうるという可能性について検証する.具体的には,申請者が長年調査を行ってきたスラウェシ島のメダカ科魚類を対象に,オスの体色の原因遺伝子座が性染色体上に位置しているかの検討を行い,性染色体の置換が熱帯の生物の多様化に果たした役割について考察する. 本年度は,スラウェシ島中部のマリリ湖群から,黄色い体色のマーモラタスメダカ(Oryzias marmratus)と,その近縁種で黄色くないマタネンシスメダカ(O. matanensis)を採集し,活かしたまま日本に持ち帰った.持ち帰った個体をそれぞれ純系ペアで交配し,各ペアから計20個体ずつのF1の雌雄を得た.これらの個体はエタノールに保存し,RAD-Seqに供して性と完全連鎖するマーカーを探査し,性染色体を同定する予定である.また,マーモラタスとマタネンシスの異種交配も行い,F1個体のオスの黄色の発色具合をチェックした.予備的ではあるが,黄色いマーモラタスをオスとしたペアの方が,その逆の組み合わせのペアに比べて,黄色の発色が強い傾向が見られ,黄色の発色に関わる遺伝子が,マーモラタスの性染色体に存在している可能性が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スラウェシ中部での採集も首尾良く終了し,実験に用いる個体を無事持ち帰ることができた.ペア数はまだ少ないが,F1の作出にも成功し,各F1から体色データを得ることもできた.研究目的に沿って,おおむね順調に進展していると評価した.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,マーモラタスとマタネンシスの種間交雑のペア数を増やしていく予定である.また,ポソ湖の黒いメダカの採集も行い,黒いメダカのクレードの性染色体の同定も行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
QTLマッピング用のSNPジェノタイピングを他の予算から捻出することができたため.
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次年度使用額の使用計画 |
実験補助員の雇用時間を長くすることで,人件費の余剰分を使用する計画である.
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