研究課題
熱帯では,強い性淘汰がオスの二次性徴形質の急速な進化を促進するという実証研究が蓄積しつつある.しかし,性的二型に内在する遺伝子座内性的葛藤が,熱帯の生物でどのように解消されているのか,その遺伝基盤は不明である.本研究では,性染色体の置換が起こった場合,新しい性決定遺伝子の近傍に新たな性的拮抗遺伝子の連鎖不平衡状態が再構築され,二次性徴形質の急速な進化が生じうるという可能性について検証する.具体的には,申請者が長年調査を行ってきたスラウェシ島のメダカ科魚類を対象に,オスの体色の原因遺伝子座が性染色体上に位置しているかの検討を行い,性染色体の置換が熱帯の生物の多様化に果たした役割について考察する.昨年度の研究により,スラウェシ島中部のラントア湖とマハロナ湖のマーモラタスメダカ(O. marmoratus)は,先行研究での報告通り10番染色体に雄決定遺伝子があるのに対し,トゥティ湖のマーモラタスメダカは10番に雄決定遺伝子があるオスとないオスとが存在すること,ならびに,トゥティ湖に同所的に生息するプロファンディコラメダカ(O. profundicola)は,先行研究での報告とは異なり,雄決定遺伝子が10番染色体には存在しないことがわかっている.これら3つの湖は,その他2つの湖とともに,互いに河川で接続しておりマリリ湖群と呼ばれる水系を形成している.本年度は,マーモラタスとプロファンディコラをはじめ,このマリリ湖群に固有のメダカ4種6集団の集団構造を,ddRAD-seqによって得られたSNPマーカーを用いて明らかにした.その結果,トゥティ湖に同所的に生息するマーモラタスとプロファンディコラは,互いに雑種を形成していることが明らかとなり,この雑種形成が性決定様式の多型性に影響している可能性が示唆された.
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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