研究課題
寒冷な東北・中央アジア地域の集団であるモンゴル人の96名を対象として、全ゲノムレベルでの一塩基多型(SNP)遺伝型判定を実施、1000人ゲノムプロジェクトで公開されている東アジア人のゲノムワイドSNP遺伝型情報との比較解析を実施した。その結果、染色体領域3p12.1に、モンゴル人と近縁な遊牧集団にほぼ特異的に起きたと思われる正の自然選択の痕跡を同定した。自然選択の作用を最も強く受けたと思われるSNPは、遺伝子間領域に存在するエンハンサーの活性に影響を与える機能的多型であり、モンゴル人666人を対象とした関連解析では、body mass index 等の肥満度の指標とも関連していた。Approximate Bayesian Computation法による年齢推定の結果、この正の自然選択の開始時期は現在から1500年前程度と見積もられた。この推定時期は、後期古代小氷期として知られる寒冷化の時期と一致しており、寒冷環境への適応が自然選択の背景である可能性が浮上した。東アジア人での寒冷適応の遺伝的基盤の一つあると考えられているTRIB2遺伝子のSNPについて、日本人成人48名の脂肪組織における遺伝子発現パターンを調査したところ、寒冷適応型アレルをホモ接合で保有する被験者の皮下脂肪組織では、PPARGC1A遺伝子、PRDM16遺伝子など、褐色脂肪組織での熱産生に関与する遺伝子の転写量が高いことが明らかになった。この成果は、過去の慣例適応におけるTRIB2遺伝子多型の役割を指示するものである。上記の成果に加えて、脂肪組織の分化・機能に関与する幾つかの遺伝子(CREBRF遺伝子、AHRR遺伝子)のSNPについて、東アジア・オセアニア人での身体計測血・生化学検査値への影響を調査した。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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