研究課題/領域番号 |
26292004
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
石井 尊生 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (20260648)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | イネ / 栽培化 / 野生イネ |
研究実績の概要 |
本研究では、栽培イネ誕生のきっかけとなったと考えられる穂の開閉に関する遺伝子の調節機構の解明ならびに穂の開閉に物理的に関与する種子の芒と受精に関する花器官の影響について調査し、イネの栽培化初期の実態を明らかにすることを目的としている。本年度は、野生イネO. rufipogon W630、栽培イネO. sativa Nipponbare、およびそれらの交雑後代系統を用いて、以下の4つの項目について形質調査ならびに遺伝子解析を行った。 1.穂の開閉の原因遺伝子であるOsLG1遺伝子の発現調節機構の解明:OsLG1を含む染色体領域をヘテロ型に持つ個体の自殖後代から得られた、OsLG1遺伝子領域近傍で組みかえを起こした個体を育成し、それらの穂の形態調査を行った。その結果、OsLG1遺伝子の発現調節候補領域が8.4 kbに限定された。 2.穂の開閉に関与するOsLG1遺伝子以外の新たな遺伝子の同定: OsLG1遺伝子を持たない栽培イネ遺伝的背景の戻し交雑自殖系統と栽培イネとの交雑由来のF2集団を圃場に展開し、穂の開閉に関するQTL解析を行った。なお、穂の開閉には中間型も見られたため、形質評価は開、中間型、閉の3段階で行ったところ、第5染色体上に効果の大きいQTLが検出された。 3.芒の長さを支配する遺伝子の同定:芒の長さに関して強い効果を持つ第8染色体上のQTLの詳細な位置を調べるため、栽培イネ遺伝的背景で領域付近で組みかえを起こした個体を幼苗段階で選抜した。そしてそれらを育成し後代検定用の自殖種子を得た。 4.花器官の形質を支配する遺伝子の同定: 昨年度条件設定した計測方法に基づき、栽培イネの遺伝的背景を持つ戻し交雑自殖系統を用いて、葯長や花糸長をはじめとする花器形態についてのQTL解析を行った。その結果、10形質に対して26カ所のQTLが検出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度得られたOsLG1遺伝子近傍で組み換えを起こした個体の自殖後代の遺伝子型の決定ならびに穂の開閉に関するQTL解析では、幼苗期にDNAを抽出し分子マーカー座の遺伝子型をあらかじめ調べたため、形質調査後にすぐ解析することができた。芒の長さに関するQTL領域のファインマッピングでも、幼苗期のマーカー選抜により組み換え個体を効率よく得ることができた。花器官に関する形質調査では、前年度の予備実験で設定した条件により基づき多くの系統を調べることができた。
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今後の研究の推進方策 |
先行項目の研究は、材料育成、QTL解析、ファインマッピング、後代検定に至っているので、後続項目の研究はそれに準じて効率よく進めていく予定である。なお、来年度より発現解析を行うが、正確なデータが得られることを心がける。
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次年度使用額が生じた理由 |
交付申請書に記載した経費の約85%を使用したが、年度をまたぐ解析に必要な試薬分が次年度に持ち越しになった。
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次年度使用額の使用計画 |
解析は進行中であるので、翌年度請求分と合わせて、試薬の購入に充当する。
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