研究課題/領域番号 |
26292005
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
村田 稔 岡山大学, その他部局等, 教授 (20166292)
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研究分担者 |
長岐 清孝 岡山大学, その他部局等, 准教授 (70305481)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 植物人工染色体 / 染色体変異 / Cre/LoxP / トランスポゾン / イネ / オオムギ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、イネとオオムギにおいて、多くの遺伝子を含む巨大DNAの導入が可能な“植物人工染色体”を創出し、それらを広く利用できるようカスタマイズすることにある。そのため、初年度で作成したイネ科植物用コンストラクトを用いて、イネ及びオオムギを形質転換した。このコンストラクトには、近接する2つのLoxPサイトがT-DNA内(LBとRBで挟まれる領域)に組み込まれており、そのうち1つは非自律性トランスポゾンDs内に配置されている。そのため、Acトランスポゼース(転移酵素)遺伝子が組み込まれ発現している個体では、LoxPを内部に持つDsがゲノム内の他の部位に転移する。この転移が起こると、CREリコンビナーゼ遺伝子の上流に、35Sプロモーター(P35S)が配置され、Creリコンビナーゼが発現する。発現したCreリコンビナーゼは、2つのLoxP間の組換えを特異的に触媒し、その部分のDNAを環状化することが想定された。実際に作成したイネ形質転換体のT1形質転換体においては、Creリコンビナーゼの組換えによって起こるハイグロマイシン遺伝子と35S プロモーターとの融合は確認されなかったが、次代の自殖個体の中に、このイベントを示唆するものが得られた。そこで、この個体の染色体解析を行ったところ、第10染色体の短縮化が確認された。これは、LoxP間の組換えによって、染色体の一部が環状化したが、その中にセントロメアが含まれないため、細胞分裂時に失われた結果であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
イネでは、トランスポゼースを発現している個体を形質転換することができたが、オオムギでは、この様な個体が得られておらず、今後、作成する必要があり、交配などによる導入が必要であるため。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度まで、イネ科植物用に作成した新規コンストラクトを用いて、イネ及びオオムギにおいて形質転換体を複数作出した。これらの形質転換体については、TAIL-PCR法等によりT-DNAの挿入位置を特定している。本年度は形質転換体の中から、T-DNAがセントロメア内またはその周辺に挿入された形質転換体を選抜し、それらを集中的に解析し効率をアップする。 目的とする個体が得られた場合は、PCRとFISH法により詳細な解析を行い、植物人工環状染色体(Plant Artificial Ring Chromosome: PARC)創出の可能性を探る。PARCの存在が確認された場合は、次代への伝達をPCRから同様に調査する。安定なPARCが作出された場合は、その分子構造を明らかにするとともに、ベクターとしての利用を図る。オオムギについては、まだAcトランスポゼース遺伝子を含んだ形質転換体が得られていないため、選抜した個体にTPase遺伝子を導入し、Ds-LoxP-Dsの転移を誘発する。得られた形質転換体については染色体解析を行い、ゲノム構造の変化を確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品の納入が遅れたため
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次年度使用額の使用計画 |
納入が遅れた消耗品の費用等に使用した
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