研究課題/領域番号 |
26292008
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研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
吉田 均 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 作物研究所稲研究領域, 主任研究員 (30355565)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | イネ / 発生・分化 / 花器官 / サイズ制御 / 変異体 / メリステム |
研究実績の概要 |
作物の花器官のサイズは収量に結びつく重要な要素だが、その制御機構については未解明な点が多い。花メリステム(FM)が大型化するfon1変異体、FMが小型化するlog変異体では、それぞれ花器官の【数】が増加・減少するが、【サイズ】は顕著には変わらない。こうしたことから、花器官サイズはFMのサイズとは独立の制御を受けていることが示唆される。本研究では、花器官の【数】は変化せずに【サイズ】のみが野生型の半分以下に縮小するmif変異体や、花器官を含む小穂全体が小型化するtig変異体などを用い、原因遺伝子を単離し、機能を明らかにするとともに、遺伝子間相互作用を解析することによって、イネの花器官サイズ制御の分子機構を明らかにする。
平成26年度は以下の研究を行った。 1)mif変異体では、外穎・内穎のサイズは正常であるが、鱗被より内側の花器官が極端に小型化していた。また、雄蕊様の鱗被、細胞塊を伴う半透明の葯、雌蕊の増加など、アイデンティティやFMの有限性の異常を示した。次年度にファインマッピングを集中的に行うため、インド型イネとの交配集団を拡充するとともに、FMサイズの大型化するfon1との二重変異体解析に用いるF2種子を増殖した。 2)tig変異体では、小穂を構成する各器官のサイズが野生型の約半分に縮小するにもかかわらず、草丈はやや減少するにとどまり、生殖器官特異的なサイズ制御機構の変異体と考えられた。また、雄蕊数がやや減少する一方、雌蕊数の増加が見られた。しかし、tigの親および兄弟個体に由来する200以上の分離個体の中から同変異は再現されず、tigが遺伝的キメラであったなどの可能性が示唆された。以上の結果から、tigの解析を中止する。 3)tigに替わる研究対象として、葯が短くなるsan変異体を同定した。sanの解析により、器官特異的かつ基部・先端軸特異的なサイズ制御機構の解明を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
mifについては予定通り、形態学的解析やマッピングを進めているが、tig変異体については表現型が再現されなかったことから、以降の遺伝解析および詳細な形態解析を中止することとした。しかし、新たに雄蕊の部位・方向特異的に小型化を示すsan変異体を得ることができたので、今後はmifおよびsan変異体の解析を行うよう、計画を変更する。
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今後の研究の推進方策 |
1)花器官サイズを制御する因子の解析 mifを中心に、変異形質の分布、各種生殖メリステム~花器官の形成過程を詳細に観察し、花器官形成のどのステップに異常を生じたものかを明らかにする。また、メリステムの未分化細胞や花器官原基のマーカー遺伝子の発現パターンをin situハイブリダイゼーションによって解析する。これらの解析を通じて、各変異体におけるFMサイズおよび花器官原基のサイズおよび形成時期などの変化を明らかにする。 2)mif変異体とfon1, log変異体の二重変異体解析 26年度に得られたF2集団の中からfon1ホモの個体を選抜する。サイズと数に着目し、二重変異体における花器官の形成過程を観察する。また、FMサイズの小型化するlog変異体についても二重変異体を作成し、表現型を解析する。 3)新規変異体の原因遺伝子同定 26年度に得られたF2集団を圃場で栽培し、花器官サイズの調査を行う。マーカー数を増やして原因遺伝子を同定する。また、葯の長さのみが縮小するshort anther (san) とインド型イネのF2分離集団を作成し、原因遺伝子を同定する。さらに、同定した遺伝子の発現解析および推定されるタンパク構造をもとに機能解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
tig変異体の解析を中止したことにより、新規変異体の形態学的および分子生物学的解析を次年度以降に行うこととしたため、1,822,910円を次年度使用額とした。
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次年度使用額の使用計画 |
本研究課題の推進のため、次年度の研究費は、交付申請時の計画どおり物品費・旅費・謝金・その他に使用する。次年度使用額1,822,910円は、新たに同定したsan変異体の各種解析に充てるものとし、次年度に請求する研究費と合わせて研究計画遂行のために使用する。
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