研究課題/領域番号 |
26292009
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
青木 直大 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (70466811)
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研究分担者 |
平野 達也 名城大学, 農学部, 教授 (30319313)
廣瀬 竜郎 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中央農業総合研究センター, 主任研究員 (90355579)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 植物(イネ) / 茎 / 炭水化物代謝 |
研究実績の概要 |
本研究では、イネの茎部(葉鞘・稈)におけるデンプン・糖の含有率の決定に深く関与する代謝制御因子を明らかにするために、1)茎部における非構造性炭水化物(NSC:主にデンプンとショ糖)の蓄積パターンの特徴を明らかにしながら、2)NSCの合成および分解経路を代謝レベル(酵素機能解析、転流機能解析)または遺伝子レベル(アイソジーン解析、網羅的遺伝子発現解析)で解析している。本年度の成果として、主に以下のことが挙げられる。 ・穂が小さく、収穫期において茎部にショ糖(およびデンプン)を高濃度で蓄積する、高ショ糖品種「たちすずか」や「たちあやか」、および「日本晴‐短穂変異体」や高NSC品種「リーフスター」について、1)の解析を行った結果、イネ茎部におけるNSCの蓄積量および組成は穂の大きさ(シンク・サイズ)のみによって決定されるものではなく、高NSC品種はそれぞれ特有のNSC蓄積メカニズムを有することが示唆された。 ・上記の3つの高NSC品種およびそれらの親品種の茎部(出穂後20日)における網羅的遺伝子発現解析(RNA-seq)から、デンプンまたはショ糖濃度と発現量との間に強い正の相関が認められる遺伝子のリストを得た。このリストはイネ茎部における高NSC形質や高ショ糖形質に関与している遺伝子を含んでいると考えられる。 ・「日本晴」を用いた茎部NSC関連酵素遺伝子のアイソジーン解析から、デンプン分解酵素β-アミラーゼのBAM2、BAM3およびBAM5が、またイソアミラーゼのISA3が、茎部におけるデンプン分解に関与していることが明らかになった。この他にも、ショ糖リン酸合成酵素のSPS1やショ糖分解酵素のINV2およびINV3の茎部NSC蓄積機構への貢献度が明らかになりつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
イネ茎部におけるNSCの蓄積量および組成は穂の大きさ(シンク・サイズ)のみによって決定されるものではないということは、シンク・サイズなどの穂形質を変えずにNSCの蓄積量やショ糖/デンプン比を遺伝的に改変することが可能であることを意味しており、このことを実証できたことは大きな成果であるといえる。また、茎部NSC関連酵素遺伝子のアイソジーン解析も順調に進んでおり、茎部のデンプン分解に関与するβ-アミラーゼとイソアミラーゼのアイソジーンが新たに明らかになった。「たちすずか」や「たちあやか」などの高ショ糖形質に関わるアイソジーンや新規遺伝子の特定はやや遅れているが、上記RNAseqのデータを活用することによって有望遺伝子を絞り込むことが可能である。以上のことから、本研究課題は概ね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き茎部のデンプン・糖の合成および分解経路を代謝レベル(酵素機能解析、転流機能解析)または遺伝子レベル(アイソジーン解析、網羅的遺伝子発現解析)で解析する。これまでに選定した候補遺伝子(ショ糖リン酸合成酵、ショ糖合成酵素、液胞型インベルターゼ、ADP-グルコースピロホスホリラーゼ、アミラーゼなど)に関するノックアウト系統(およびそれらの遺伝子相補系統)、RNAi系統および過剰発現系統について、茎部におけるNSCの蓄積パターンを中心に解析を続け、候補遺伝子(アイソジーン)の茎部における機能を検証する。また、茎部の網羅的遺伝子発現解析(RNAseq)から得られた情報をもとに新たな候補遺伝子を選定し、茎部における機能を検証するための材料作りを試みる(ノックアウト系統の探索、RNAi系統の作出など)。
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