本研究は,C4植物の葉肉細胞特異的な葉緑体凝集運動の生理的役割と分子機構を明らかにすることを目的としている。 初年度に確立したスクリーニング系を用いて,葉緑体凝集運動が起こらないエノコログサ変異体のスクリーニングを引き続き行ったが,明白な運動低下が起こる変異体は見出されなかった。 C3植物葉緑体の光定位運動に関与するタンパク質因子chup1について,エノコログサを対象としたRNAi発現抑制株の作製を試みた。しかし,発現抑制が確認できたRNAi株は得られなかったので,ゲノム編集技術を用いたノックアウト株の作製を進めている。 凝集配置時の葉肉葉緑体は維管束鞘細胞側へ偏在しているが,細胞中で各葉緑体がどのように重なり合って配置しているのかは分かっていない。そこで,葉緑体の細胞内立体配置を明らかにして,凝集運動の生理的意義(葉緑体相互の被陰,維管束鞘細胞との代謝距離の短縮など)解明の足掛かりを得ようとした。共焦点レーザー顕微鏡下での葉緑体由来クロロフィルおよび細胞壁由来リグニンの自家蛍光をもとに,細胞内での葉緑体の三次元立体配置の構築を行った。凝集運動時の葉緑体の相互の重なり具合や細胞内位置を通常時のものと比較し,凝集運動がストレス応答とどのように関係性をもつかについて考察を行っている。
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