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2014 年度 実績報告書

異形根性に注目した作物根系水吸収・輸送構造の解明

研究課題

研究課題/領域番号 26292012
研究機関名古屋大学

研究代表者

山内 章  名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (30230303)

研究分担者 犬飼 義明  名古屋大学, 農学国際教育協力研究センター, 准教授 (20377790)
三屋 史朗  名古屋大学, 生命農学研究科, 助教 (70432250)
仲田 麻奈  名古屋大学, 農学国際教育協力研究センター, 学振特別研究員(RPD) (70623958)
研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワード異形根性 / 水通導性 / 通気組織 / QTL解析
研究実績の概要

1. 根系を構成する異形側根間の形態学的差異の解明と観察手法の確立
根組織の透明化と,導管内に強制的に発生させた気泡の移動の観察によって,切片を作製することなく導管の成熟を観察する手法を,従来,導管の成熟を調べる手法として用いられてきた樹脂切片法と比較し,より容易に導管の成熟を観察できることが明らかとなった.
播種後10日目の種子根軸の基部において,L型側根のLMX,PX,木部柔組織,内皮,一部の外皮の細胞壁にリグニンが蓄積した一方,S型側根ではPX,木部柔細胞,内皮に蓄積が観察された.両側根において,スベリンは内皮および中心柱で観察されたが,肥厚したスベリンラメラは観察されなかった.また,皮層空隙は種子根軸基部に分布したL型側根でのみ観察された.そして,L型側根のPX,LMXはそれぞれ,L型側根の出現から約1,4日目においてL型側根の根長の50%以上の範囲で成熟していた一方,S型側根のPXは,S型側根の出現から1日目においてS型側根の根長の50%以上の範囲で成熟していた.

2. 種子根系を構成する種子根軸および異形側根の水吸収速度、量の比較
アポプラスティックトレーサーとして,蛍光色素であるSulphorhodamine GとPTSを用い,種子根軸の位置別ならびに側根種類別に吸水量、また各根表面積当たりの吸水速度の推定手法の検討を行った.その結果,蛍光色素を含む水耕液に植物体を移植して90分後から,蒸散量と根系内の蛍光色素の蓄積量との間に有意な正の相関が得られた.一方,吸水量と根内部における蛍光色素の動態の観察,蛍光色素を吸収させる時間の決定,および蛍光色素の抽出方法の決定に対して,より詳細な検討が必要であることが分かった.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

全体的に実験・観察手法の確立に当初予想していたより,多くの時間を要しているのが最大の原因である.具体的には、1)種子根軸と側根との維管束連絡の観察および共焦点レーザー顕微鏡による導管成熟の観察方法の確立,2)種子根軸の位置別ならびに側根種類別の吸水量,また各根表面積当たりの吸水速度の推定のための蛍光色素を用いる手法について詳細な条件設定,3)プロトプラストの膨張速度を計測することで細胞の水透過率を求める手法の確立.
これらについて,現在鋭意検討中である.

今後の研究の推進方策

種子根軸と側根との維管束連絡の観察では,連絡部における細胞質を伴う細胞の存在部位と細胞壁へのリグニンとスベリンの蓄積を調べる.また,アポプラスト経路のみを移動できる蛍光色素の蓄積部位を凍結置換法と樹脂切片法によって明らかにする.さらに,異形側根別の伸長速度および構成細胞の老化程度を調べる.老化程度はエンバスブルー染色法によって細胞膜の色素排出能を評価する.そのために,これまでより生育期間を延長し,播種後20,30日程度の種子根系を観察する.
また,根内部における蛍光色素の動態の観察,蛍光色素を吸収させる時間の決定,および蛍光色素の抽出方法の決定を行い,吸水速度をより正確に測定する.また,種子根軸の位置別ならびに側根種類別の吸水量、また各根表面積当たりの吸水速度と比例関係にある水通導性の評価をルートプレッシャープローブの利用を検討することで,蛍光色素による吸水速度の推定を補完する.
さらに,プロトプラストの採取に用いる酵素(セルラーゼ,マセロザイムおよびペクトリアーゼ)の濃度と反応条件の検討を行い,プロトプラストの回収率の向上を目指す.
根系の水通導性から見た水吸収能力の評価と異形側根間の役割分担に関しては,予備実験としてポットや圃場での土耕栽培で日本晴,カサラス,系統13,17,28,36番の総根表面積,異形側根別の表面積を測定し,異形側根の構成比のみが日本晴と有意に異なる品種が存在するかどうかを調べる.

次年度使用額が生じた理由

上述のように,実験手法の確立で難航している部分が多く,それ以降の,実際の測定や分析が行えなかったことが最大の理由である.

次年度使用額の使用計画

今年度の実験計画に加えて,昨年度計画してできなかった分を含めて実施する予定なので,交付申請書で記述したとおり執行する予定である.

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2015 2014

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] QTL associated with lateral root plasticity in response to soil moisture fluctuation stress in rice2015

    • 著者名/発表者名
      Jonathan M. Niones, Yoshiaki Inukai, Roel R. Suralta and Akira Yamauchi
    • 雑誌名

      Plant and Soil

      巻: in press ページ: in press

    • DOI

      10.1007/s11104-015-2404-x

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Matching the Expression of Root Plasticity with Soil Moisture Availability Maximizes Rice Productivity under Drought2015

    • 著者名/発表者名
      Emi Kameoka, Roel Suralta, Mitsuya Shiro and Akira Yamauchi
    • 雑誌名

      Plant Production Science

      巻: 18 ページ: in press

    • DOI

      in press

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [学会発表] Hydraulic architecture in the relationship of lateral root development with the maturity of xylem vessels in the seminal root system of soil-grown seedlings in rice2014

    • 著者名/発表者名
      Takuya Kabuki, Shiro Mitsuya, Akira Yamauchi
    • 学会等名
      第8回アジア作物会議
    • 発表場所
      ベトナム ハノイ
    • 年月日
      2014-09-23 – 2014-09-25
  • [学会発表] δ13C fluctuation among plant organs grown under various intensities of drought stress in rice2014

    • 著者名/発表者名
      Mana Kano-Nakata, Jiro Tatsumi, Yoshiaki Inukai, Shuichi Asanuma and Akira Yamauchi
    • 学会等名
      第8回アジア作物会議
    • 発表場所
      ベトナム ハノイ
    • 年月日
      2014-09-23 – 2014-09-25
  • [学会発表] Toposequence position-dependent phenotypic plasticity for rice root distribution patterns in depths in response to water conditions2014

    • 著者名/発表者名
      Emi Kameoka, Shiro Mitsuya, Roel R. Suralta and Akira Yamauchi
    • 学会等名
      第8回アジア作物会議
    • 発表場所
      ベトナム ハノイ
    • 年月日
      2014-09-23 – 2014-09-25
  • [学会発表] ラインソーススプリンクラー法を用いたイネ根系の土壌水分勾配に対する応答評価2014

    • 著者名/発表者名
      亀岡 笑,三屋史朗,山内 章
    • 学会等名
      第40回根研究集会
    • 発表場所
      北海道医療大学当別キャンパス
    • 年月日
      2014-05-17 – 2014-05-18

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公開日: 2016-06-01  

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