研究課題/領域番号 |
26292015
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
加藤 雅也 静岡大学, 農学部, 教授 (10432197)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ノビレチン / フラボノイド / カンキツ |
研究実績の概要 |
これまでウンシュウミカン、バレンシアオレンジ、太田ポンカンのフラベド(果皮部分)におけるフラボノイド含量およびポリメトキシフラボノイド生合成に関わる遺伝子発現の季節変化を調査した。その結果、フラボノイド含量および組成において品種間差が認められ、太田ポンカンではノビレチン含量が他の2品種と比較して非常に高いレベルであった。また、太田ポンカンでは、成熟期間中、フラボノイド4‘O-メチルトランスフェラーゼ遺伝子(Cit4’OMT)の発現が他の品種と比較して非常に高いレベルであった。したがって、ポンカンのフラベドにおけるノビレチン生合成には、Cit4’OMT の遺伝子発現が深く関わっていることが示唆された。 これらの結果を踏まえて平成28年度は、Cit4’OMT の機能解析を行った。太田ポンカン由来のCit4’OMTからリコンビナントタンパク質をGSTとの融合タンパク質として大腸菌内で発現させ、抽出、精製した。精製タンパク質をSDS-PAGEで確認したところ、37 kDa付近にシングルバンドとして検出された。これは、Cit4’OMTの推定アミノ酸配列から得られた分子量と一致した。得られたCit4’OMT精製タンパク質を用いてin vitroにおいて機能解析を行った。Cit4’OMTを4’位にヒドロキシル基を持つナリルチンを基質として反応させ、生成物をHPLCにより解析した。その結果、新たなピークが検出され、Cit4’OMTがナリルチンの4’位のヒドロキシル基をメトキシ化した可能性が示唆された。これらの結果より、Cit4’OMTは太田ポンカンにおけるノビレチン生合成において重要な役割を担う酵素遺伝子であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は、Cit4’OMT の機能解析を行うために、太田ポンカン由来のCit4’OMTからリコンビナントタンパク質を作製した。Cit4’OMT タンパク質は、GSTとの融合タンパク質として大腸菌内で発現させ、抽出、精製した。その結果、精製されたCit4’OMTタンパク質が得られた。このCit4’OMTを4’位にヒドロキシル基を持つナリルチンを基質として反応させ、生成物をHPLCにより解析した。その結果、新たなピークが検出され、Cit4’OMTがナリルチンの4’位のヒドロキシル基をメトキシ化した可能性が示唆された。これらの結果から、ノビレチン生合成の鍵となるフラボノイドO-メチルトランスフェラーゼ遺伝子の機能解析が進んでおり、本研究課題はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、フラボノイド4‘O-メチルトランスフェラーゼ(Cit4’OMT)について、さらなる酵素学的な機能を調査するために、ナリルチン以外の基質となり得るフラボノイドとin vitroにおいて反応させることにより、機能解析を行う予定である。また、これまでに単離したフラボノイド3-O-メチルトランスフェラーゼおよびフラボノイド8-O-メチルトランスフェラーゼ遺伝子についても、リコンビナントタンパク質を大腸菌を用いて作成し、その機能について調査を行う予定である。
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