研究実績の概要 |
平成29年度は、新たなノビレチンを調節する遺伝子を探索するために、ノビレチン含量の低いウンシュウミカンおよびノビレチン含量の高い太田ポンカンとカンキツ中間母本農6号のフラベド(果皮部分)におけるフラボノイド含量およびポリメトキシフラボノイド生合成に関わる遺伝子発現の季節変化を調査した。カンキツ3品種におけるフラボノイド含量・組成は品種間差が認められた。いずれも果実の成熟に伴いフラボノイド含量は減少する傾向を示した。ウンシュウミカンではヘスペリジンなどのフラバノン類が蓄積されたのに対し、カンキツ中間母本農6号および太田ポンカンではフラボン類およびノビレチンなどのポリメトキシフラボノイド類が蓄積された。フラボノイド代謝関連遺伝子の発現解析を行ったところ、カンキツ中間母本農6号および太田ポンカンでは、フラボン生合成に関わるCitFNSの遺伝子発現が果実の若い8月で高いレベルを示した。またCit3’OMTおよびCit8OMTの遺伝子発現も8月に高いレベルを示し、その遺伝子発現パターンはノビレチン含量の変動と類似した傾向を示した。Cit4’OMTの遺伝子発現は12月のポンカンにおいて最も高いレベルを示した。 また、OMTの機能解析を行うためにCit4’OMT、Cit3’OMTおよびCit8OMTからリコンビナントタンパク質を、大腸菌を用いて発現させ、抽出および精製した。精製タンパク質をSDS-PAGEで確認したところ、Cit4’OMTおよび3’OMTいずれもシングルバンドとして検出された。Cit4’OMTの機能解析を行うため、様々なフラボノイドを基質として反応させ、生成物をHPLCにより分析した。その結果、7,8-ジヒドロキシフラボンを基質とした場合に新たなピークが検出され、Cit4’OMTは7位、8位、あるいはその両方の水酸基をメトキシル化した可能性が示唆された。
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