研究課題
抵抗性対立遺伝子座RCY1、HRT、RPP8は、Cucumber mosaic virus (CMV)、Turnip crinkle virus (TCV)、アブラナ科べと病菌(Hyaloperonospora arabidopsidis: Hpa)に対するCC-NB-LRR型抵抗性タンパク質をコードしている. RCY1/RPP8キメラ遺伝子に対するCMVとHpaの応答解析のための予備実験として、本年度は、RCY1とその対立遺伝子であるHRTの間で、RCY1/HRTキメラ遺伝子を作成し、CMVまたはTCV感染Nicotiana benthamiana 葉で一過的発現解析を行った。その結果、LRRドメインの相互置換により、CMVとTCV抵抗性が反転した。LRRドメインは、病原体のもつ非病原性因子を直接的あるいは間接的に認識することにより、抵抗性タンパク質の高次構造を変化させ、下流シグナル伝達系を活性化させることにより抵抗性を誘導するモデルが提唱されているが、本結果は、そのモデルに合致するものであった。次に、CMV外被タンパク質遺伝子へのランダム変異導入による非病原性機能の喪失解析では、既報のN末端近傍3アミノ酸に加え、新たに39、140、142、164、191残基目のアミノ酸の非病原性機能への関与が示唆された。外被タンパク質サブユニットの高次構造予測によれば、これらアミノ酸は、外被タンパク質サブユニットの表面に位置していることが推察された。これらの知見はCMV抵抗性の分子基盤を理解する上で有効と考えられる。
2: おおむね順調に進展している
抵抗性対立遺伝子座RCY1、HRT、RPP8は、CC-NB-LRR型抵抗性タンパク質をコードする対立遺伝子である。RCY1/RPP8キメラ抵抗性遺伝子の機能解析に先立って、RCY1/HRTキメラ抵抗性遺伝子を作出し、CMVとTCVに対する特異的抵抗性を決定するドメインを明らかにすることができた。この成果は、RCY1/RPP8キメラ抵抗性遺伝子の機能解析を進める道筋をつけるものであり、研究は概ね順調に進展していると評価できる。
RCY1/HRTキメラ抵抗性遺伝子を用いた各抵抗性タンパク質のドメイン機能解析(CMVとTCVに対する特異的抵抗性を決定するドメインの解析)成果を、RCY1/RPP8キメラ抵抗性遺伝子の機能解析に適用することにより、CMVとアブラナ科べと病菌の特異的抵抗性を明らかにする。
非病原性因子であるCMV外被タンパク質に1アミノ酸置換を導入した変異シリーズを作出したところ、一部のベクターコンストラクトにおいて、外被タンパク質の発現が検出できなかっことから、れなかったため、タグ配列と付加部位を改変したベクターを再構築し、非病原性因子としての機能の再解析と詳細な評価を実施する必要が生じた。
キメラ抵抗性遺伝子形質転換体の作出およびCMVキメラ外被タンパク質発現ベクターの作出を行い、同キメラ外被タンパク質の一過的発現に対する形質転換体の応答を解析し、成果を取りまとめる。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件)
PLoS ONE
巻: 9 ページ: e99041
10.1371/journal.pone.0107185
Plant Cell Reports
巻: 33 ページ: 99-110
Physiological and Molecular Plant Pathology
巻: 85 ページ: 8-14