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2014 年度 実績報告書

MAPキナーゼの基質WRKY型転写因子による植物免疫機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 26292023
研究機関名古屋大学

研究代表者

吉岡 博文  名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (30240245)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2018-03-31
キーワードシグナル伝達
研究実績の概要

植物が病原菌を認識して生体防御機構を始動すると、活性酸素種 (ROS) の生産や細胞死を伴った激しい免疫応答が誘導される。この誘導過程には、防御応答に関与するMAPキナーゼであるSIPKが関与することが報告されてきた。しかし、ROS生産や細胞死を伴う免疫応答の誘導機構の全容は未だ明らかとなっていない。これまでに、SIPKの基質である複数のWRKY型転写因子を単離してきた。各WRKY型転写因子を単独でベンサミアナ葉に過剰発現させることによって、WRKY8はNADPHオキシダーゼであるNbRBOHBの転写活性化を伴うROS生産と細胞死を誘導すること、WRKY14はROSを生産することなく激しい細胞死を誘導することを見出した。一方でWRKY13は、ROSおよび細胞死ともに誘導しないため、ネガティブコントロールとして用いた。本研究では、WRKY8、WRKY13およびWRKY14の下流遺伝子を比較することによってデータベースを構築し、遺伝子破壊システムを駆使して免疫応答の制御機構を明らかにすることを目的とした。今年度は、次世代シークエンサーによるRNA-seq解析を行うことによって、これらWRKYの下流の遺伝子を網羅的に探索した。構築したデータベースを比較検討し、WRKY13で誘導される遺伝子を除くことでWRKY8とWRKY14によって顕著に誘導される約200の遺伝子を抽出した。それら候補遺伝子は、ROS生産および細胞死の誘導に関与すると思われる遺伝子群を含んでいた。実際に、得られた遺伝子群のうち約50遺伝子の発現をリアルタイムPCRによって評価したところ、6割の遺伝子の発現誘導の再現性が確認された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今年度は、MAPキナーゼの基質であるWRKY8、13、14の下流の遺伝子を網羅的に探索し、データベースを構築することを目的とした。これらWRKYは、リン酸化部位に疑似リン酸化変異を施すことで下流の応答が亢進される。したがって、WRKYの擬似リン酸化変異体を一過的に導入したベンサミアナ葉を用いて、次世代シークエンサーによるRNA-seq解析を行った。その結果、WRKY下流の候補遺伝子として既知の防御関連遺伝子を含む多くの遺伝子が得られた。それら候補遺伝子は、複数のWRKYにより重複して発現を制御される遺伝子と、より特異的に制御される遺伝子が見出された。各WRKYの性質の違いから、ROS生産および細胞死の誘導に関与する遺伝子群を推察することができた。実際に、WRKY8とWRKY14によって著しく誘導される遺伝子群のうち約50遺伝子の発現をリアルタイムPCRによって評価したところ、6割の遺伝子の発現誘導の再現性が確認された。

今後の研究の推進方策

平成27年度は、当初ChIP-seq (クロマチン免疫沈降シークエンス) 解析によってWRKY8または14に直接結合するDNAを探索する予定であった。しかし、現時点においてはベンサミアナタバコのゲノム配列データ情報が十分整備されていないため、ChIP-seq解析で得られるデータが制限されると予想された。そこで本年度は、26年度に得られたRNA-seqデータをより確実なものとするために、さらに反復することでより正確なデータを構築することとした。WRKY8および14の下流で誘導されると予想される約200の遺伝子をさらに絞り込み、活性型、非活性型WRKY変異体をベンサミアナ葉に発現させ、qRT-PCRによって下流の制御遺伝子を探索する。さらに、遺伝子の過剰発現におけるアーティファクトも考慮し、各WRKY遺伝子の自身プロモーターも併せて用いる予定である。

次年度使用額が生じた理由

平成27年度は、当初ChIP-seq (クロマチン免疫沈降シークエンス) 解析によってWRKY8または14に直接結合するDNAを探索する予定であった。しかし、現時点においてはベンサミアナタバコのゲノム配列データ情報が十分整備されていないため、ChIP-seq解析で得られるデータが制限されると予想された。そこで27年度は、26年度に得られたRNA-seqデータをより確実なものとするために、さらに反復することでより正確なデータを構築することとしたため、一部予算を繰り越した。

次年度使用額の使用計画

多サンプルのRNA-seqデータを取得するためにRNA試料を準備しており、順次遂行する予定である。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2015 2014 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] リン酸化反応が制御するROSバーストの分子機構2015

    • 著者名/発表者名
      吉岡博文,安達広明,石濱伸明,中野孝明,白石佑太郎,宮川典子,野村裕也,吉岡美樹,浅井秀太
    • 雑誌名

      日本植物病理学会報

      巻: 81 ページ: 1-8.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Kinase-mediated orchestration of NADPH oxidase in plant immunity2015

    • 著者名/発表者名
      Hiroaki Adachi and Hirofumi Yoshioka
    • 雑誌名

      Briefings in Functional Genomics

      巻: 14 ページ: in press

    • DOI

      doi: 10.1093/bfgp/elv004

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] An immune receptor decoy converts pathogen disabling of transcription factor-DNA binding into resistance2015

    • 著者名/発表者名
      Le Roux, C., Huet, G., Jauneau, A., Camborde, L., Trémousaygue, D., Kraut, A., Zhou, B., Levaillant, M., Adachi, H., Yoshioka, H., Rafaele, S., Berthomé, R., Couté, Y., Parker, J.E. and Deslandes, L.
    • 雑誌名

      Cell

      巻: in press ページ: in press

    • 査読あり
  • [学会発表] RNA-seqによるMAPK-WRKY経路下流の植物免疫関連遺伝子の探索2015

    • 著者名/発表者名
      安達広明・佐藤昌直・吉岡博文
    • 学会等名
      平成27年度日本植物病理学会大会
    • 発表場所
      明治大学
    • 年月日
      2015-03-28 – 2015-03-31
  • [学会発表] RNA-seqによるMAPK-WRKY経路下流の免疫応答誘導機構の解析2015

    • 著者名/発表者名
      安達広明・佐藤昌直・吉岡博文
    • 学会等名
      第56回日本植物生理学会年会
    • 発表場所
      東京農業大学
    • 年月日
      2015-03-16 – 2015-03-31
  • [学会発表] ナス科植物の免疫応答における活性酸素の生成機構2014

    • 著者名/発表者名
      吉岡博文
    • 学会等名
      第11回日本ナス科コンソシアム年会
    • 発表場所
      名古屋大学
    • 年月日
      2014-10-25 – 2014-10-26
    • 招待講演
  • [図書] Methods in Molecular Biology2014

    • 著者名/発表者名
      Ishihama, N., Adachi, H., Yoshioka, M. and Yoshioka, H.
    • 総ページ数
      11
    • 出版者
      Springer/Humana Press
  • [備考] 研究室ホームページ

    • URL

      http://www.agr.nagoya-u.ac.jp/%7ebio4283/index.html

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公開日: 2016-06-01  

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