研究課題
植物が病原菌を認識して生体防御機構を始動すると、活性酸素種 (ROS) の生産や細胞死を伴った激しい免疫応答が誘導される。この誘導過程には、防御応答に関与するMAPキナーゼであるSIPKが関与することが報告されてきた。しかし、ROS生産や細胞死を伴う免疫応答の誘導機構の全容は未だ明らかとなっていない。これまでに、SIPKの基質である複数のWRKY型転写因子を単離してきた。各WRKY型転写因子を単独でベンサミアナ葉に過剰発現させることによって、WRKY8はNADPHオキシダーゼであるNbRBOHBの転写活性化を伴うROS生産と細胞死を誘導すること、WRKY14はROSを生産することなく激しい細胞死を誘導することを見出した。一方でWRKY13は、ROSおよび細胞死ともに誘導しないため、ネガティブコントロールとして用いた。本研究では、WRKY8、WRKY13およびWRKY14の下流遺伝子を比較することによってデータベースを構築し、遺伝子破壊システムを駆使して免疫応答の制御機構を明らかにすることを目的とした。本年度は、次世代シークエンサーによるRNA-seq解析を繰り返し行うことによって、これらWRKYの下流の遺伝子を網羅的に探索した。構築したデータベースを統計的に比較検討し、細胞死を誘導するWRKY8および14の下流で共通に誘導される遺伝子を絞り込んだ結果、転写因子、レセプターに加え、防御、レドックスなどに関与する27の遺伝子が見出された。
2: おおむね順調に進展している
平成27年度は、予定に従ってWRKY8および14によって誘導される、あるいは抑制される遺伝子群をRNA-seqの反復によって正確に把握することができた。細胞死を誘導するWRKY8および14の下流で共通に誘導される遺伝子を絞り込んだ結果、転写因子、レセプターに加え、防御、レドックスなどに関与する27の遺伝子が見出された。
本年度は、これらの遺伝子をウイルス誘導型ジーンサイレンシング法 (VIGS) を用いて抑制し、活性型のWRKY8、MEK2、SIPK、さらにジャガイモ疫病菌のタンパク質エリシターINF1などによって誘導される細胞死に対する影響を調べる予定である。
平成28年度は、抗体やDNA関連試薬、キットなど高額な消耗品を購入する予定が生じたため。
研究の進展具合を勘案し、順次購入する予定である。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 3件、 査読あり 9件、 謝辞記載あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 4件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
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