研究実績の概要 |
シコクビエ菌MZ5-1-6とコムギ菌Br48を交雑して得たF1菌系を、コムギ品種農林4号(N4)、Chinese Spring (CS), Hopeに接種したところ、非病原性菌系:病原性菌系がN4, CSの上では15:1に、Hopeの上では3:1に分離した。このことから、シコクビエ菌のN4/CS、Hopeに対する非病原性は、それぞれ4遺伝子、2遺伝子に支配されていることが判明した。また、分離パターンの比較解析から、Hopeに対する2遺伝子は、N4/CSに対する4遺伝子のうちの2つと同じもであることが判明した。そこで、HopeとN4/CS両方に作用する遺伝子をA1, A2, N4/CSのみに作用する遺伝子をA3, A4とした。A4をクローニングするため、A4のみをもつ菌系をBr48で戻し交雑し、BC1F1菌系群を得た。これをN4/CSに接種したところ、非病原性菌系と病原性菌系1:1に分離した。すなわち、A4の単独分離集団が得られた。このデータをもとに、非病原性バルク・病原性バルクを作成した。一方、N4 x HopeのF2に上記F1菌系を接種した結果、A3に対するR3, A4に対するR4を検出することに成功した。このことから、シコクビエ菌とコムギの間の非親和性も、Gene-for-gene関係に従うことが確認された。 一方、ペレニアルライグラス菌のPWT3を破壊したところ、幼苗検定においてコムギに病原性となることが明らかとなった。これは、穂を用いた検定でも確認された。エンバク菌のPWT3, PWT4を破壊したところ、幼苗を侵すことはできなかったが、穂に対する病原性を獲得することが明らかとなった。以上のことから、非病原力遺伝子の機能欠損により、ホストジャンプが起こりうることが示唆された。
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