研究実績の概要 |
これまで、いもち病菌 Pyricularia oryzaeの菌群とイネ科植物属間に認められる特異性の解析を、主としてコムギ菌・エンバク菌・ペレニアルライグラス菌を用いて行なってきたが、これを、P. oryzaeの祖先型に近いと考えられているシコクビエ菌に拡張した。H26年度において、シコクビエ菌MZ5-1-6とコムギ菌Br48の交雑により得られたF1をコムギ品種Chinese Spring (CS)とHopeに接種し、両品種共通に作用する2遺伝子(A1, A2)とCSのみに作用する2遺伝子(A3, A4)の合計4個の非病原力遺伝子を検出した。本年度は、A3の単離を試みた。 分離パターンを詳細に検討したところ、A3はすでにクローニングしたPWT3(エンバク菌・ペレニアルライグラス菌のコムギに対する非病原力遺伝子)である可能性が示唆された。そこで、Br48をMZ5-1-6由来PWT3ホモログで形質転換しCS, Hopeに接種したところ、形質転換体はCS特異的に非病原性を示した。すなわち、A3=PWT3であることが明らかとなった。以上のことから、PWT3に対応する抵抗性遺伝子Rwt3は、エンバク菌・ペレニアルライグラス菌・シコクビエ菌に共通に作用する極めて重要な抵抗性遺伝子であることが示唆された。 次に、A4のクローニングに向けて、A4を単独で持つF1菌系をBr48で戻し交雑した。CSに接種したところ、非病原性菌系と病原性菌系が1:1に分離した。この集団を用いた分子マッピングの結果、A4は第2染色体に座乗していることが判明した。
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