研究課題
これまでに退緑・黄化の分子機構解析用モデル実験系としてCaMV Tav発現,およびChlIやHSP90Cの誘導型発現抑制系を導入した形質転換タバコ系統群(ami-ChlIおよびhp-HSP90C)を作出した.これらはいずれも誘導薬剤依存的に退緑・黄化を発症し,病害応答遺伝子の誘導を示し,退緑・黄化に発症に共通の分子機構が関与することが示唆された.そこで,これら植物において誘導薬剤処理の有無による遺伝子発現変動を明らかにする目的で,RNseq解析を行った.その結果,主成分分析では3種類のモデル系における遺伝子発現パターンはそれぞれ異なることが示唆されたが,発現変動遺伝子のGO解析では,葉緑体・光合成関連遺伝子の発現抑制に加え,病害応答や細胞死に関与する遺伝子の発現亢進が共通して認められた.そこで,hp-HSP90Cにおいて細胞死の検出を試みたが,細胞死は認められなかった.このことから退緑・黄化の発症においては細胞死に至るシグナル経路が部分的にしか活性化されていないものと推察された.一方,Tavを誘導発現するシロイヌナズナが成長抑制を示し,細胞増殖関連遺伝子の発現抑制,およびストレス応答や植物ホルモン応答に関与する遺伝子群の発現亢進が認められることをすでに明らかにした.局所的な誘導薬剤処理によって,植物ホルモンなどの全身性シグナルの関与は限定的であり,同植物における成長抑制は,Tavを発現する細胞による細胞自律的な現象であることが示唆された.変異原処理した同植物について誘導薬剤存在下で生育可能な突然変異体のスクリーニングを行い,Tavを発現しているにもかかわらず成長抑制を示さない突然変異体を100個体以上得た.THF1に対するamiRNAを誘導発現するタバコについては,T2世代を用いて誘導薬剤処理後1日でTHF1の発現抑制が認められること,明確な退緑・黄化が生じることを確認し,さらに病害応答遺伝子の誘導が認められることを明らかにした.
29年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2017
すべて 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件)