イベルメクチン(IVM)は、イエバエ由来グルタミン酸作動性塩素イオンチャネル(GluCl)とGABA作動性塩素イオンチャネル(GABACl)に対して電流誘起、電流増強、電流阻害の3作用を示した。3作用いずれにおいてもGluClの方が感受性が高かった。第3膜貫通領域の保存性Glyの変異はいずれの効果に対しても減弱あるいは消失をもたらした。イエバエGABAClにおいて、アルドリン、ディルドリンとそれらの立体異性体であるエンドリン、イソドリンではサブユニット第2膜貫通領域の変異による結合親和性低下に差がみられた。イエバエのヒスタミン作動性塩素イオンチャネルの解析の結果、MdHClBチャネルは既存の薬剤に対する感受性は低かったが、GABAやモノアミン類によっても活性化される注目すべき特徴を持っていた。 遺伝子の選択的スプライシングにより生じるカイコガGluClのバリアント3bと3c間でPenicillium simplicissimum AK-40株が生産する殺虫性物質オカラミンの作用を比較したところ、これらのバリアントの間ではオカラミンBの活性化作用の程度に差はみられなかった。両バリアントをHEK293細胞で発現させ、その膜画分に対する[3H]IVMの特異的結合に対するオカラミンBの影響について検討したところ、本化合物によって[3H]IVMのKdはほとんど影響を受けずBmaxが有意に減少した。 寄生性線虫データベース中のサツマイモネコブセンチュウのゲノム配列をC.elegansのアミン作動性塩素イオンチャネルLGC-40、-53および-55のアミノ酸配列を用いてBLAST検索し、RT-PCRにより全長cDNAを得た。サツマイモネコブセンチュウの感染性幼虫に対して浸漬RNAiを行い、根への感染実験を行ったところ、lgc-53 RNAi処理によるmRNA量の低下が根への侵入抑制をもたらすことが示唆された。 以上の結果、リガンド作動性塩素イオンチャネルの生物制御剤ターゲットとしての重要性が示された。
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