研究課題/領域番号 |
26292032
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
朽津 和幸 東京理科大学, 理工学部, 教授 (50211884)
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研究分担者 |
来須 孝光 東京工科大学, 公私立大学の部局等, 助教 (50422499)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 膜交通系 / 活性酸素種 / カルシウムイオン / 植物免疫 / 植物防除剤 / エンドサイトーシス / NADPHオキシダーゼ / 抵抗性誘導剤 |
研究実績の概要 |
植物免疫活性化剤の簡便な選抜系を構築し、化合物ライブラリーから複数の候補化合物を選抜し、作用機構の解析を進めた。既存剤の中から選抜した細胞内膜交通系阻害剤は、シロイヌナズナで微生物分子パターン(MAMP)誘導性の活性酸素種(ROS)生成を亢進した。化合物と膜輸送の関係を解析した結果に基づき、膜交通系が感染防御応答を負に制御するとの作業仮説を立て、分子機構の解明を試みた。エンドサイトーシス等、膜交通系の各段階の変異体を用いて、MAMP誘導性の感染防御応答に対する膜交通系阻害剤の効果を解析した結果、一部膜交通系での変異体では、野生型株と比べてROS生成が促進されていた一方、阻害剤の促進効果が顕著に抑制されていた。細胞膜上に存在する受容体FLS2はMAMPであるflg22を受容すると、エンドサイトーシスにより細胞内に取り込まれ、最終的に液胞に輸送され分解される。そこで、flg22受容後のFLS2-GFPの細胞内動態を共焦点顕微鏡により定量的にイメージング解析し、膜交通系阻害剤の影響を詳細に解析した。この阻害剤は、MAMP受容体の細胞内の輸送、分解過程を阻害することで、感染防御応答を亢進していると考えられた。実際、一部の膜輸送系の変異体では病原細菌に対する耐病性が亢進していた。免疫応答時のMAMP受容体の分解は、免疫応答の調節機構として機能している可能性が示唆された。 一方、新規化合物CY15は、MAMP誘導性のROS生成及びPR1遺伝子の発現量を亢進した。SA経路の変異体に対する効果を調べた結果、CY15は既存の植物免疫活性化剤とは異なる作用機構でMAMP誘導性の防御応答を亢進している可能性が示唆された。化合物に対する感受性の異なる変異体を探索し、作用点の化学遺伝学的同定を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シロイヌナズナの植物個体を用いた実験では、個体差が予想以上に大きいことが障害となっていたが、試行錯誤を繰り返し、実験系を改良できつつある。変異体におけるGFP融合タンパク質の動態解析実験系の構築も困難を極めたが、形質転換体を取得することができ、解析を開始している。
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今後の研究の推進方策 |
化学遺伝学的解析を推進し、植物免疫の分子機構の解明を進めると共に、新規植物免疫活性化剤、抑制剤候補化合物の同定を推進する。候補化合物がどの植物(作物)のどの病気に対して最も効果を発揮するかの予測は難しいが、モデル植物といくつかのモデル病原菌との実験系を用いた解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
植物個体を用いた解析実験系の構築を試みたところ、予想を上回る個体差が存在することが判明した。安定した実験系が確立できない状態で大規模な遺伝子発現解析を行うことは効率的でないと判断し、試行錯誤を繰り返し、実験系の改良を進めた。その結果、改良に成功したため、次年度に解析を進める計画である。 また、変異体を用いたタンパク質局在解析実験系の構築も予想以上に難航し、試行錯誤を繰り返した。その結果、実験系を概ね確立できたので、次年度に解析を進める計画である。
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次年度使用額の使用計画 |
上記のように、当初今年度に計画していた実験の一部を次年度に延期し、実験系の改良を進めた。遺伝子発現の大規模解析や、見出した変異体におけるタンパク質局在解析等の実験を、次年度に実施するために使用する計画である。
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