研究実績の概要 |
タバコBY-2細胞の活性酸素種(ROS)生成を指標とした簡便なハイスループットスクリーニング系(特許登録済)を構築し、新規抵抗性誘導剤候補化合物の探索を進めた。候補化合物CY22、CY55は、抗菌活性は見られず, シロイヌナズナのトマト斑葉細菌病菌に対する耐病性、MAMP (微生物分子パターン) flg22誘導性のROS生成や応答性遺伝子発現を亢進したことから、植物の基礎的抵抗性を高める効果があると考えられた。サリチル酸(SA)経路を介して植物の耐病性を亢進するbenzo(1,2,3)thiadiazole-7-carbothioic acid (BTH)等の既存剤と異なり、化合物単体ではPR1遺伝子の発現誘導や生育阻害がほとんど見られなかった。またBTHは、SAシグナル伝達系に欠損を持つnpr1変異体ではflg22誘導性のROS生成を亢進しなかったが、CY22, CY55はnpr1変異体においても亢進効果が見られた。このように、既存剤と異なり、SA経路を介さずに植物の病害応答を亢進する新規化合物を同定した。 細胞内膜交通系阻害剤は、シロイヌナズナの感染防御応答を亢進した。各種変異体の解析の結果、エンドソーム-液胞融合過程に重要な低分子量Gタンパク質RAB7やQa-SNAREの変異体では、トマト斑葉細菌病菌に対する基礎的抵抗性や、細菌鞭毛由来のMAMPflg22誘導性の一部の防御応答(ROS生成、カロース蓄積等)が野生型に比べて亢進していた。flg22処理後のFLS2-GFPの細胞内動態を比較解析した結果、rab7変異体ではFLS2を含むエンドソームが蓄積し、液胞との融合過程が阻害/遅延していた。さらにrab7変異体ではFLS2タンパク質が野生型に比べて増加していた。エンドソーム-液胞融合過程が植物免疫系を負に制御することを見出した。
|