研究課題
I. リン酸長距離輸送に関わる水輸送体遺伝子の同定AM菌Rhizophagus clarusの水輸送体遺伝子RcAQP3の水輸送活性を酵母形質転換系により確認した。また、この遺伝子のノックダウンによりAM菌のリン酸輸送速度が低下し、植物へのリン酸供給量も低下した。これらのことは、この水輸送体が菌糸内のリン酸輸送の駆動力を伝える役割を担っていることを強く示唆する。II. 共生菌から植物へのリン酸放出を担うリン酸排出輸送体の同定H22-24科研費におけるトランスクリプトーム解析から同定されたRcPHO1は、植物のリン酸排出輸送体遺伝子と相同性が高く、AM菌から植物根細胞へのリン酸移行を担うと予測されたため、この遺伝子のノックダウンを行ったところ、植物へのリン酸供給量が低下し、AM菌の形態形成や感染量にも変化が観察された。現在は、RcPHO1をいもち病菌に形質転換することで機能解析する方法を検討している。
1: 当初の計画以上に進展している
H27年度はRcAQP3のノックダウン実験、およびRcPHO1のノックダウン条件の検討が目標であったが、どちらの実験も予想外の進展がみられ、RcAQP3とリン酸長距離輸送との関係については、ノックダウン個体の表現形質の解析が終了して既に論文も受理された。また、RcPHO1とリン酸移行プロセスとの関係については、本遺伝子のクローニング後、ノックダウン実験における表現形質の解析までが終了している。
RcPHO1の輸送体としての機能および細胞内局在性を調べるために、相同遺伝子を持ち、同じ糸状菌であるいもち病菌に遺伝子導入し、リン酸排出活性を測定する実験系の確立を進めている。また、RcPHO1のC末端側の合成ペプチドを用いて作製した抗体を使い、電子顕微鏡による細胞内局在性の調査(免疫電顕)を行っている(研究協力者)。また、免疫電顕がうまく行かなかった時のために、いもち病菌の相同遺伝子にGFPを連結し、いもち病菌の細胞内におけるPHO1の局在性も調査する予定である。これら試験が順調に進めば、今年度後半には論文を投稿することができるものと見込んでいる。
本研究の標的遺伝子であるPHO1の細胞内局在性に関する研究打合せのために、研究協力者である斎藤准教授@信州大学のもとに出張予定であったが、先方での担当学生の就職活動によって実験遂行に遅れが生じ、その分の出張旅費が余剰金となった。
斎藤准教授@信州大学のもとで同実験を担当する学生を新たに得た後、研究打合せのための出張旅費に本余剰経費を使用する予定である。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 6件、 招待講演 1件) 図書 (2件)
日本土壌肥料学雑誌
巻: 87 ページ: 64-69
New Phytologist
巻: 未定 ページ: 未定
巻: 206 ページ: 983-989
10.1111/nph.13375
Soil Science and Plant Nutrition
巻: 61 ページ: 269-274
10.1080/00380768.2014.993298
Mycorrhiza
巻: 25 ページ: 411-417
10.1007/s00572-014-0623-2
Planta
巻: 241 ページ: 687-698
10.1007/s00425-014-2208-x
Plant Virology Protocols, Methods in Molecular Biology
巻: 1236 ページ: 171-180
10.1007/978-1-4939-1743-3_13